56,おかえりなさい





「な、皆で説教っちゅーんは「文次郎、先頭に居る竹谷に連絡を」
「ああ」

「わーお」




シカト続行中なんはこれは気にしたら負けなんかな
言ったらダメなんかな



「な、せんぞ「焙烙火矢でも口に詰めるか?」 スミマセン」
「あんまり、を脅さないでくださいよ、センパイ!」

「鉢屋こそ、の手に痕でも付ける気か」
「縄で縛ってもいいんですけどね!」

「もう腹を縛られてるんですけど」




三郎に腕を痣ができそうなくらい握られ
前をスタスタ歩く雷蔵は俺の腹に左門よろしくのごとく縄が着いている




「つか、もう逃げへんて…」
「目を離せばどこかへ行きそうだ」
「長次まで…」




「本当に、もう何処にも行かないか」
「え?」




長次がそんなこというなんて珍しいと横を向けばジッと見つめる目
不安そうな目に三郎に握られていない方の手を差し出す




「んっ」
「…」
「長次の見えるところにずっとおる、約束しぃひん?」
「―――…、もし私があの学園を去っても…求めている場所にお前は居るのか」

「おる、絶対に」
「その手をとったら、約束してくれるのか」
「ああ、だから…手ぇ繋ごう?」





長次の手が伸ばされて指が絡む
笑いかければ、照れたように長次がそっぽを向く





「私も」






手首を掴んでいた手が手のひらに回る
少しその冷たさに驚いて三郎を見れば





「私の見える範囲にがいないと嫌だ」
「おやまあ」





なんやねんそれ、三郎らしくない
うるさいっ





しっかりと指を絡めて手を繋げばより一層ギュッと握られた





「っふふ」
「何が可笑しい」
「…」



「わかんない」





若とは違う暖かさだ
そういえば、当然だと笑われてしまった









「忍術学園につくよ、さん」
「ああ、帰ってきたんやなあ」


「―――、さん」





正面に雷蔵が来て頭をギュッと抱きしめられる
そのあとに額と額がくっついて雷蔵が小さく口パクをした




「―――ー!」
「誰よりも先に言いたかったんだ」






さぁあああああああああああああああん!」





大きな声が響き渡り、小松田さんのヒャァアアアみんな外出るならしゅつもんひょぉおお!との声も聞こえた
門を少し離れたところから走ってくる一年は組




両手を離され、雷蔵の縄もとれていて
ゆっくりとしゃがんで両手を広げた瞬間飛び込んでくる暖かさ







さんっ!」
「わあああああああああん、勝手に居なくならないでよぉおおお!」
「、さん…戻ってきてくださったんですね」
「先輩たちが絶対に連れ戻してくるって言ってたんだ」
「やっぱりさんは帰ってきてくれた…!」

「本当はさんもう帰ってこないかと思って」


「…、向こうの方が…さんの帰る場所だから…」






きり丸の言葉にギュッと胸が縮む
堪忍なぁ、堪忍ときり丸を抱きくるめる





「守るところはここなんねんで?」
さん?」
「俺は一回守ると決めたら意地でも守る。あの門を跨いだ時から約束しとるん」

「じゃ、じゃあ絶対、絶対ここにいるんですね?」
「おう、俺の息の根が止まるまで、ここと此処に住むお前らを守り抜くよ
 もう家族みたいなもんやしな」

「家族?」
「家族」






しっかりときり丸の目を見て言う
彼はふにゃんと破顔して俺の頬に擦りついた







さん!」
ー!」
「お説教ですよ!!!さん!!」



「三木ヱ門、そないにがっつかんといてや」
「本当にわかってないですね!!あなた!!!わかりました、私、平滝夜叉丸…心を鬼にしてあなたを叱ります」
「それはあかん、まじであかん…堪忍堪忍、タカ丸、喜八郎なんとかして」


「してもいいですけど…私と一緒に寝てくれますか?」
「なんでもします」
「おやまあ」


「バカタレ!普通にギンギンに説教だ!!」
「普通にギンギン!」





思わずビクリと肩を揺らせばきり丸が、今回ばかりは助けませんと苦笑してる





「すごかったんですから、一番最初に気付いた立花先輩が、は組に来てさんを探して」
「そのあとに二年の教室に入ってきた食満先輩が全員で探索だとか言いに来て」

「三年の長屋に来たと思ったら、左門と三之助を自由に行動させろって中在家先輩が」
「…迷子の2人ならの場所へ自然にたどり着ける確率が高いからな」



「そんなバタバタに私達四年が障子を開けたら」



を探しに裏裏裏裏裏裏山にいくぞ!!』



「七松先輩が来て…」



思い出しただけでも恐ろしいと三木ヱ門が苦痛な表情を浮かべた




「五年は五年で学園長先生の所に行って、聞いたんだ」
さんの退職届を見せられてね」




が!?』
『帰った…』
『あのバカ、何も言わずに!!』

『雷蔵…』
『うん、わかってる』





「気付いたら、雷蔵と三郎が居なくなっててよ」
「俺のところ、すぐ来たんか…」

「三郎の目が怖かったんだから」
「余計なこと言うな」




すぐにの城に向かったよ
途中で、六年生たちと合流したんだけどさ







笑いながら話すみんなが敷居を跨ぐ
それを見ながら敷居を跨ぐ足を止め門の前で止まる







「――――、(帰ってきたんやなあ)」






さん」
さんッ!」






グイッと庄左ヱ門、乱太郎に腕を引かれ敷居を跨ぐ







「おかえりなさい、さん」
「―――、」






「おかえり、さん」
「おかえり」
「待ってましたよ!さん!おかえりなさい!!」








「ただいま、皆」







2人の手を握ったまま笑いあった





おしまい

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