「うぁああ!?真選組だぁあ!?」
「怯むな!押せ!」

「ッ上にお伝えするぞ!」



もう上は屍状態ですぜ
まあ教えようとは思わないけれど
原田さんと土方さん、近藤さんが上に斬りかかったと聞けばもう何も言うことはない



「引くなァ!こういうときは押して押せェ!!」
「たっ、隊長…」




新米の一人を助け腕を引きあげて刀を持たせる





「それが無理ならこのまま実家に帰れ」
「ッ」




土方さんがこれを聞いたら怒るだろう
だって局注法度に違反することになるから

それを破ってでも伝えるのはコイツが逃げないとわかるから
兄に信じろと言われたから




「ひっ!」
「真選組の狗もここまで弱ったかァ?」
「ッ」




視界に黒い服、真選組の隊士が刀を振るわれている
この距離なら間に合うと走りかける



「行かせるかよ」
「!」




ブンッと横で刀の音が掠めそいつを受け止められ
これじゃああの隊士の元へは間に合わない




「ッ」
「あー、ダメダメ、その斬り方だと一瞬で死んじゃう」





急にここの場所には似合わない爽やかの声
ズンッと人を切り裂く音が聞こえ、自分も相手を切り裂いた後にそちらを見る



ズシャンッと肉塊が崩れ落ちる音がしてうぁあああ!と浪士が呻きながら段々と息を切らす




「こうやってやった方が、自分の人生振り返りながら死ねるだろう?覚えた?」
…にっ…い…」
「ほら、立て…、刀を持て」


「ッ、兄…俺…」
「怖がるな、俺より怖い人間が今は居ないだろう?」
「!」
兄…」
「一番怖い俺に育てられたんだ、そこら辺の浪士にお前は絶対に負けないよ」





立ち上がった隊士を兄が背中を押す




「お前らの背中は俺が守る」




ほら、その言葉で周りの新米隊士の動きに迷いがなくなったでさァ





兄」
「ん?どうした?」





サイレンが騒々しくなる中、兄に近寄れば珍しく煙管を持つ姿
その姿に通りすがる隊士が目が目を見開いて兄の姿に見惚れる




「今回も死人なしでさァ」
「うん、よかった…あ、総悟近寄るなっつっただろ」



受動喫煙は体に毒だと俺を煙管の中身をカラにする



兄のその煙管の匂い…好きでィ」
「そう?嬉しいな」




煙管をクルクルと回し、キュッと煙管を握る



「毎回新米に言ってる言葉、あれはヒーローの登場シーンと絡めてるみたいですぜ」
「あー、あれ?絶対に言ってやるんだ、あれは」
「そういって隊士全員の背中を守るっつー約束を取り付けてること、皆気付いてないのが可笑しいでさァ」

「総悟の背中も俺が守るよ?」
「ーー、そうですか」




遠くからたいちょおおお!と聞こえ
兄が煙管を口に咥えるのを見てからそこを立ち去った








「あれ、銀時だ」
「煙管とかもう止めたかと思った」
「何?どうしてここにいんの?」
「ジャンプ買いに来たら御用改めしてただけだ」

「そっか」
「背中を守るねぇ」
「聞いてたのか?」




銀時を見やれば、スンッと肩を竦めてあぁ、と答えた




「お前何人の背中守る気だよ」
「全員」
「アホだねェ、んなことできるかよ」
「出来ないと思うからできないんだって、銀時だってやれば就職できるさ」
「俺は経営者だボケェ!!」




ゴツンッと頭を殴られ
頭を抱えて煙管を離す





「なーに?」

「手、震えてんぞ」
「んー」
「抑えるために、煙管とかお前はヤクチューですかー」
「…」


「怖かったんだろ」
「…」
「守れなくなるんじゃないかって」
「ーーーぎんっむ」




視界が暗くなり銀時の匂いが鼻孔をくすぐる
驚きに目を見開き煙管を落としてしまう


カランッと音を鳴らしてその煙管が落ちる





「バカヤローだな」
「なに」
「江戸の奴等守るお前の背中、誰が守るんだ」
「ーーー、俺」




ゴンッ!




「っぅ、痛い」
「馬鹿だろ」
「だって…俺、守ってもらいたくないもん」
「アァ?」


「俺のこと守ったら死ぬんだ」
「ーー」
「俺のことなんか守るから、師匠が」




ーーー 貴方は生きなさい





「師匠が…」






ガッと頬を両手で押さえられ上を向かされる
銀時の赤い目が俺を従え半眼のソレが無表情で俺を射抜いた




「アホ
「!」




ペチッと頬を叩かれ強引に口を塞がれる
え、なんで!?と思う前に舌が入り込み銀時のされるまま




「ーーんっ、ぎっ、ぎんとっ」
「落ち着いただろ」
「!?」




ニッと口端を上げた銀時が俺の煙管を持ち去っていく




「没収でーす、お巡りさんがタバコとか教育に悪いんでな」
「銀時!」
「なに」
「あり、がと…」


「おー」




手を振った銀時の片手に艶やかな柄をまとった煙管が光った





誰が守るのですか
(貴方の背中を)




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