「あ!テレビの者なんですが、この巨大狗についてどう思いますかあ?」
「可愛いじゃないですか?」

「いやそういうことじゃなくて」
「眉毛が好きだなあ、俺」
「いやあの」



「オイ、




バッと振り返ればトシが俺の髪を掴んでいた



「サボってんじゃねえぞ」
「としー、定春でっかくなっちゃった」
「あァ?」



少し上の視線にあるトシを見上げればお前の知り合いかよとめんどくさそうに言われた



「雨の凌ぎ方…考えないとなあ」
「お前…仕事してんのかよ」


「あはー、書類は終わったからいいでしょ?」
「ーー…仕方ねえな」




好きにしろ、と踵を返していった
さて、明日は雨だ…どうしようかなあ





ーーー
ーーーーー
ーーーーーーー
ーーーーー
ーーー





「さーだはるー!かーぐら!」
「あ、ネ」

「傘、ねーだろ?ビニールシート持ってきたよー」
「おォ!凄いアル!!」



屋根に乗れば神楽が定春の頭を少し退いて開けてくれる
その隣に座って定春の頭にビニールシートをかぶせた



「かわいいなぁ定春はでっかくなっても愛しいよな」
もそう思うアルか?」
「おー、なんか広い場所…借りてやるからな」
「えっあるネ?そんなところ」

「大丈夫だって俺が探してやるから」



神楽の頭を撫で、前を向けば
下に集まる子供が定春に石を投げてきた



ゴンッとそれはあたり定春がキャンッと痛そうな声をあげる



「定春!」
「ーー、」
「でてけェエエ!!化け物はこの町から出ていけェエ!」
「てめーらァア!なにしやがんだァァ!動物愛護でうったえるぞぉおお!」



神楽の叫びが聞こえ
屋根の端に足をつける


「なーにが動物だ!!とんでもねー化け物連れ込みやがって!!」
「妖怪じゃ!あれは妖怪じゃぁああ!!」
「今にそこから抜け出して江戸中の人間を食っちまうぞ!!」
「殺しちまえあんな化け物ォ!」



神楽が番傘を開け傘を縦に定春を守る





スタンッとその場から降り警察手帳を開く





「警察だ、今…石投げた人…取調室までご同行ください」





ニッコリと笑顔を張り付けた俺にあ、と誰かが声を漏らす




さん」
「言っておくけど、必須事項ね…子供は保護者様にご連絡いたしますので電話番号をここにお控えください」




"さん"と呼ばれた俺が神楽を見上げれば
目を押さえた状態だった





「か、神楽!」





急いで屋根に戻り神楽を抱きかかえる




「怪我、…ッ」





スカーフを引き裂いて目元に当て
大丈夫?と起き上がらせようとしたら後ろからの殺気に振り返る



メキメキと音を鳴らした定春の殺気が膨れ上がり
屋根を破って豹変してしまった




「さ、さだは…」





取り調べは俺がします
(大事な妹を怪我させた罪、どう償っても俺は許しませんよ)





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