きれいだった
その場に居た時から彼は"キレイ"な存在だった
彼はセンセーが消えてしまったらこつ然と姿を消し
残っていたのは大量の食材と金貨
何故このようなものがと思うが消えた彼を思い出し涙が出た
次に彼を見たのは攘夷戦争
江戸の背中を守る自分たちの背中を守る彼に気付いた
絶対にあいつ等は殺させない!!絶対に!!あいつ等を殺したいなら、俺を殺せェエエ!!
叫び声が聞こえて刀を振るうのを止め目を見開いて声の方を見た
屍の上に立つ茶髪の金色の瞳
"キレイ"だった
「だから」
ベンッ
弦の弾く音がハッと意識を浮上させる
「…」
―― もう止めて
あの言葉で裏切られたんだ
俺の言うことは全部賛同してきたのに
なんでわかってくれない
そう思っていたら刀を真正面に振るっていた
だからアイツを兄だと一度も思ったことない
アイツは俺の"モノ"だからだ
写真の中で黒い服を身に纏った茶髪が揺れる
それは楽しそうに笑っていた
「クソが」
ぐしゃりと写真を握りしめ畳に投げ捨てる
「、」
うわごとのように名前を呼ぶ
大丈夫だもうすぐこの手にアレが来る
二度と動けないように足枷を用意しようか、ああでもそんなの抜けてしまうだろう
なら靭を斬ってしまえば良い
「兄、おはよう」
「おはよ、総悟…」
兄は最初とても汚かった
血にまみれ泥だらけ、何が起こったかもわからない暗闇だらけの汚い存在に見えた
そんな存在が少しだけ俺とかぶっていて
まだまだ小さかった俺は兄のことを何一つ理解していなかったから
兄が数年してこつ然としたときは唖然とするしかなかった
攘夷戦争…、きっとこれが原因で兄は消えたんだと思う
コロッと帰ってくるかと思えば重傷で運ばれてきた兄
ああ、なんてバカな人なんだろうって思った
「兄」
「ん?」
でも大丈夫だ、ここに兄は居る
きっともう二度と離れないだろう
離れようともなら真選組を挙げて彼を拘束するだろう
「の飼い主は俺でさァ」
「お?久々にソレ聞いた気がする」
、と呼ぶのは二人きりの時だけで
滅多じゃないと呼び捨てなんてしない
「今日は悪寒がするでィ」
「あー、じゃあ布団から出ないのもありかもなあ」
「そうしましょうぜィ」
「させねよォオオオ!!!」
「「!」」
スパーンッと開いたそこに立つのは忌まわしきバカだった
兄が起き上がりおはよう、トシと笑顔を振りまく
ワンテンポ遅れておうと答えた副長にため息を吐いて兄の肌蹴た色白な胸が見えた
大きく残る一本の筋、居なくなって戻ってきたら作ってやがったそれだ
クシャリと自分の頭を撫でた兄がガシガシと茶髪をむしる
じぃっと見ていたらバレたらしく俺を見て
「癖、ついてるよ」
「!」
爽やかに笑う彼に頭の撫でられを数回繰り返される
正に兄のような行動
一通り見てた土方さんさえも呆れたように兄を見た
「今日のご飯なんだろうなあ」
「おい肌蹴やべえぞ、早く服着ろ」
「んなとこ見てる土方さんマジキモイ死ね」
「ってめぇえええええ!」
朝一番の真選組屯所に響いた叫び声
ぶっちゃけ日常であった
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