目の前に降りてきた晋助が俺の頬を撫でる
「なんで、ここにいるの?」
「忘れ物、取りに」
「そ、そうか…晋助が俺の目の前に来るなんて珍しい」
あの時以来だ
「ちゃんとご飯食べてるか?家…ちゃんとあるか?」
「幕府の狗には答える筋合いねェよ」
「ッ、晋助」
スルリと抜けた手の反対方向に握るのは小刀
真っ直ぐとそれが振りかざされ隊服が切れる
「ッ」
「こんなきたねぇモン着やがって」
斬られたその服の切れ間に手を伸ばした晋助がそのまま服を引き裂く
晋助が羽織っていた羽織をかぶせられる
「それがお似合いだ」
唖然としてるうちに髪を引っ張り上げられ視点を合わせられる
「来い、お前の居場所はここじゃあない」
「ッ」
「ーーー相変わらず甘い奴だな」
手を挙げない俺に晋助がニマリと口端を上げる
「甘すぎるんだよお前は…だからあんな馬鹿な狗共に捕まるんだ」
「…違う、あいつ等は何処にも行けない俺を拾ってくれたんだ」
「洗脳もバッチリってかァ?」
「ッッッ、違う!!違う!晋助、わかって…!こんなことをしても江戸は元に戻らない」
「戻すつもりはねェよ」
煙管から口を離した晋助が俺の口を塞ぎ煙を流し込んでくる
「ケフッ!ッッァ」
「壊すだけだ」
「ッァあ…」
手で握られた古傷
爪を立てられミミズのような傷が入る
「(ダメだ、こんな事を)晋助、お願い」
「テメェの願いは後でいくらでも聞いてやらァ」
クラリと視界が揺れ倒れたところを晋助が俺を受け止める
こんなに大きくなって…と場違いなことを感じてしまった
動かない身体
「毒効くのおせぇな、流石だ」
「ッ…すけ」
「……」
「ーーー、め……ッご…」
身体が言うことを効かない
晋助が俺をいわゆる姫抱きというものをして屋根の上を軽々と歩く
「ーーーご」
総悟
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