光が収まっていく
うっすらと目を開けた私たちに飛び込んできたのは
戦場の後すら感じさせない真っ新な中庭
自分たちの少し先に蹲る一年は組
駆け寄ればふるふると怯えていた
「おい、お前たち」
「立花せんぱ…」
最初に顔を上げた庄左ヱ門
よかった怪我はなさそうだと安堵の息を吐く
「三郎!?」
不破雷蔵の声に鉢屋三郎の気配を追えば塀の向こうに姿を消していた
それを追う留三郎
「先輩…」
不破が私を見てどうしようかと迷っている
バタバタとタイミングが良いのか先生たちの気配には組達も立ち上がった
「お前たち!!大丈夫か!!」
「さっきの忍びはそっちも居たのか!!」
「「「「「「土井せんせえええええええええええええええ」」」」」」
「どおわっ!!」
ことの収集をしようとわらわらと散る
不破が来て困ったように首を傾げた
「先輩、不審者の姿がありません…逃げたのでしょうか」
「…、違う」
塀を見れば血の痕跡
向こう側にあの短時間で全員投げ飛ばしたのか
***
「鉢屋、血の匂いがわかるか」
「はい、この先は…急流です」
「どういうつもりだ」
「さあ」
首を傾げる鉢屋にため息が出る
確かに、この状況じゃさんが何をしたいのかわからない
一年に血を見せたくないがために閃光弾を使い
きっと殺した
「先輩、そのへんに死体が捨ててありますよ」
「…」
一年の視界じゃ到底入らない場所からする血の匂い
けどさんの気配はもっと向こうだ
速足になることを忘れて開けた場所に出た
ボチャンッと響いたのを聞き、そこに立っているさんが振り返る
「なんや、留三郎たちやったか…まーだおんのかと思うたわ」
「さん、大丈夫なのか…その…怪我」
「あー、大丈夫大丈夫…それよか学園戻ってチビっ子たちあやさな」
「なにいってんだお前…怪我やばいぞ」
「はいはい、ほら戻るで」
手を振りはよ、戻りやあと指示をする
しぶしぶ振り返った彼らが消えたのを見て膝をつく
「ッーーーは」
あー、きっつい毒塗りよって
耐性のある自分だが流石に辛い
「あー…、きっつ」
あの子ら泣いてへんやろか
というか戦場みたいな場所見て俺のこと怖がらないやろうか
まあ無理か…
「(流石に良い子たちに嫌われたらかなわんな)」
脇腹を抑えて血が流れるのを待つ
これだけ流れれば少しは毒も抜けるはずや
あとは視界
「やば、なんもみえへん」
ぼやけている視界に笑うしかない
もう死ぬしかないのやろうか
「死ぬのはあかん、」
「当然だろ」
「鉢屋の言うとおりだったか」
「っ、なんや留三郎、三郎…まだ行ってへんかったんか」
「俺の大事な後輩たちを守ってくれた奴は放っておかない」
「…流石に信用するしかないだろ」
視界が紺色に染まって、ああこれ三郎におぶられてるなと感じた
「こいつ、こんなに小さかったっけ」
そんな鉢屋の声も聞こえなかった
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