13,まるで甘味のようで



さん!肩揉みましょうか?」
くん、髪…結ってあげる」
さん、豆腐食べませんか?」

さん、散歩に連れてってあげますよ」




「…」




あれから学園長に目がよくなるまでは一人でうろうろするのは禁止と言われ
大人しくしていればかわるがわる人が来る




「おおきに、伊助…おいでぎゅーさせてや」
「!」




伊助を胸に埋めれば子供特有の体温
あーもうこれやこれ。最近は見えてきた視界に安心しつつも
前ですり寄ってくる彼の行動はぼやけてみる



「まだ、目はよくなりませんか?」
「あー、もうちょい伊助が抱きしめてくれたらようなるわ」
「!」
「じゃあ僕もぎゅー」


「タカ丸重たいやーん、うわ、髪こしょばゆい!」
くん今日お布団の匂いするー」
「あたりまえやろ、ずっと布団中にいたんやから」
「あったかーい」





背中の重みに嬉しさを感じているとギュッと腕に誰かが抱き着く




「んお?…三朗次」
「…伊助にべたべたしないでください」
「かんにんなー、子供暖かいんよーほら、三朗次もおいで」



手を引き彼も腕の中に居れる
そうすれば彼は別に僕は暖かくありませんと顔をそむける




「んー、気持ちええなあ」
さん、包帯変えるんで3人を離してください」

「なんやへーすけ、つれへんなあ」
「そういう問題じゃあないですよ」





タカ丸を引き離した兵助が俺の前に座る
伊助と三朗次も避けて着物を脱いだ




「タカ丸さん、目に効く薬を乱太郎に持ってくるように伝えてきてください」
「えー?僕がいくのー?」
「ええ、伊助も一緒に行ってくれるか_」
「はっはい!」
「なら、僕も行きます」

「じゃー、僕いらなくない?」
「上級生も一緒の方がいいでしょう」





ちぇーと愚痴を一瞬漏らしタカ丸たちが部屋を出ていく
包帯を変える兵助が無言でグルグルと俺の体に触れる




「なん、兵助…みんな追い出して」
「…いえ」
「…、大変やな。上級生って」
「どういうことですか?」



顔を上げた兵助の頭を胸元にギューッと押し込める
ピクリと体を揺らした兵助の背中をポンポンッとあやした





「襲撃事件、上級生も恐かったやろうに…なんも弱音はかなかったらしいやん」
「それは、…当然です」
「当然やとしても、それは辛いことや。伊作くんやって辛そうな顔してたのに俺の治療をするんや」




それで気付いた、この子たちは大事に大事に育てられてるんだって
この子たちの先輩にも先生にも
だからこそ弱音を吐かないこの子たちがすごく愛しく感じた





「上級生みんなもっと甘えたらええねん、もちろん俺だけにな」
「甘えなど、忍者に必要ないです」
「そんなことないでー?一人くらいには甘えたらどうや。ほら俺とかちょうどええやん」





パッと顔を上げた兵助の額に接吻をする
真っ赤になった兵助に満足げにしていたら
突然視界が揺れてゴンッ!!と頭を床にぶつけた


視界にはぼやけた肌色と黒髪




「へーすけ?」
「…我慢などしていないし、弱音なんて吐きたいと思ってないですよ」
「お、おお」
「けど、さんに甘えたいのは一理あります」


「おー、」



だから、と紡いだ兵助の顔が間近に来た…気がする


「甘えさせてもらいます」




鼻の頭に何か温かい感触
そう思ったら兵助の顔が大きく近づいて、次は額に暖かい感触
え?なに?と言おうとしたら次は口に接吻をされてい…た




「ん!?んむ?!」





思わず兵助の肩を掴んだら兵助はその手を自らの手と絡み合わせる
その行動に驚いていれば口が離れてクスッと含んだ笑いが耳に響いた




「甘いですね、さっ…ゴフゥッ!!」
「えっ!?」




突然の兵助の奇声
体が軽くなって起き上がってキョロキョロすればフッと優しい気配





「なんのたくらみかと思って戻ってきたけどー、兵助くん。なにしてるのー?」
「たっタカ丸さん !…に、善法寺先輩ぃいい!」
「久々知…楽しそうだね」






物凄い殺気に苦笑しつつ起き上がる





「なんで、善法寺先輩が…」
「すぐそこであったから、乱太郎じゃなくて善法寺君に頼んだんだあ」
「へっへえ…」
「後輩たちには乱太郎を呼びに行ってもらったよ」





伊作くんの鋭い声に隣の兵助がびくついたのがわかる
ポンポンと兵助の頭を撫でてやればまた鋭い殺気




「なんやねん、伊作くんにタカ丸」
「…なんでもないよー、くん目とか平気?」
「?そんなさっきとかわらへんやろ」
「いやいや、そっちのことじゃなくー」




ガッと鈍い音が響きタカ丸の語尾が強く口から紡がれる
首を傾げれば伊作くんに手を引かれ横にされた





「もう、おやすみなさい。さん」
「?お前ら俺にどないせーちゅうねん」





よくわからない2人の行動とさっきの兵助の行動に
困惑しながらも意識を手放した



次に起きたとき兵助の声が若干震えていたのはなんでやったんやろう




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