「マラソン大会ってさ、生徒だけやないんやな」
「ぜーはーぜーはー」
「ちょ、声ヤバイ…秀作大丈夫か?」
「ゼーゼーゼェゼェ(大丈夫、くん先いってても良いよ)」
「ごめん流石に俺も何ゆうてるかサッパリわからへんわ」
秀作の横に座り水を渡す
飲み干した彼がプハァッ!!と生き返ったように声を出した
「すみません、手間かけちゃって」
「いや、俺らも参戦なんがまず可笑しいやろ」
仮にも護衛の忍者なのに主人はそれを許してくれなかった
――― も参加じゃ!!主の命令に逆らう気か!!
なんて言われたらもうなにも言い返せぇへんし
「秀作、顔赤い。寝てたほうがええで」
俺の速さに頑張ってついてきてくれた秀作に驚いたし
がんばったんだなって思う
秀作の頭を自分の膝に乗せて結ってある髪を解いて首元を楽にしてあげる
パタパタと懐に入れてあった扇子で仰ぐと安らかな顔になった
「(幼い顔やなあ)」
「んぅっ」
「しゅーさく、魘されとるんか?」
「ん"−−」
面白いことに反応が返ってくる
えーなにこの人ー面白すぎやろ
「(てか、)」
全然人来ないんやけど
寂しいくらい来ないっちゅーことは
「こりゃ道間違えたな」
秀作が気付く筈もないし、
思わず吐いたため息は誰に聞こえることもない
秀作をおぶって立ち上がると森の匂いが鼻孔をくすぐる
「…、気配もなし…か」
全面的に俺が悪いんだししょうがないよな
まだぐっすりと寝ている秀作に思わず苦笑してまう
暫く人口的に作られた道を辿って行けば二股に分かれている道
「こっちだー!」
「いやこっちだー!」
あかん
これはあかん、俺の脳裏に作兵衛の泣き顔が思い浮かぶ
「左門!三之助!」
「「あれ、さーん!」」
二人でニカッと振り返る姿はなんとも愛らしいがお前ら縄付けたまんま迷子になるなや
きっとちぎれた縄を見て今頃作兵衛が泣き腫らしているやろうな
苦笑いで明後日を見ればちょこちょこと俺の方に来た
「あれ?小松田さん?」
「あー、熱中症でぶっ倒れてしもうてん。あと、道間違えたらしいから戻り中」
「だったら案内しますよ!」
「僕らも今、マラソン中ですし!」
「遠慮しとくわ、つかお前らが俺に着いて来や」
縄を俺の腹に括り直し森の向こう側を歩く
「…さんってなんかすごいですよね!」
「強いし、優しいしイケメンだし!」
「アイドルみてーだよな!」
「…アイドルは四年だけで十分やろ」
「そうじゃなくて、なんだろう…キレイっすよね」
「俺もわかるそれー、一緒に風呂かぶったときとかドキドキしちゃうもんな」
「え、三之助かぶったことあんの!?」
「迷子で遅くなったときにさんが居たことはある!」
「えー!俺も遅くに入ってみようかな!!」
「そんな人を珍獣みたいに…」
「でもみんなゆってますよ、さんの日常は木にいるか、授業に参戦してるかしかないって」
「あと、小松田さんの尻拭い?」
「…あながち間違ってへんけど」
「でも、さんって俺らとの接触避けてますよねー。昼間以外は」
「そーだよなあ、本当に影の人って感じする」
「――――…」
あんがい鋭いんやなこの2人
そら、やっぱり忍たまを避けるようにするときはある
なにかと狙われる主人のために血だって浴びるし、色を使って帰ってくることもある
前に土井先生に見られたときは真っ青になって俺を風呂場まで引いて行ってくれたのを覚えてる
「なんか、いつでも守られてるって思います」
「うん、」
「ぼくも、思うよ」
「「「!?」」」
突然聞こえた背中からの声に体を揺らすと秀作が俺から降りる感覚
「くんは知らないところでいつでも僕らを守ってくれてるんだよねえ」
「やっぱそうっすよねー!」
「小松田さんも知ってたんだ!」
「そりゃ、僕は入出門表を見てますから…!」
「もう大丈夫なんか、秀作」
「はいー!ありがとうございます!」
「ほか」
ならば、と左門と三之助の手をとり2人を見る
「ほな、帰りましょか」
「!」
「…はい!さんと手ぇ繋いで帰ったっつったら孫兵怒るかな!」
「孫兵、さんに懐いてるからなー」
一瞬驚いた顔をした2人もニコッと笑って握り返してくれた
秀作を見ればのほほんと笑って三之助の手を取って歩き始めた
「バカかお前らはぁあああああ!!」
「お前バカかよ、それでもプロ忍かよ」
「あなたが倒れては意味がないでしょう!!」
作兵衛に怒られる2人と吉野先生に怒られる秀作
それで俺は何故か三郎に怒られていた…というかめっちゃ弄られた
「でも、三郎先輩はずっとはまだかっつってたんすよ」
「六年生と五年生が捜索しようとするのを私たちずっと止めてたんですから」
「ぼく、疲れちゃったーお腹すいたー」
きり丸、乱太郎、しんべヱに言われて、
嬉しく上級生に飛びついて行ったのは仕方のないことやと思ってほしい
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