03,あなたの名前を何度でも



さーん」





振り返ると一年は組の良い子たち
思わずその光景に笑みを浮かべてしまうと彼らも満面の笑みで迎えてくれた




さん!この漢字なんて読むんですか?」
さん!お団子たべにいきません?」
さーん!サッカーやりましょうよー」

さん!僕らの部屋に遊びにきませんか?」
「それは今度にしとこかなあ」




三治郎の言葉に俊敏にお断りすると
へちょんと首を下に向けてしまった
いやいや騙されないぞ、それで10回以上は騙されてるんだ



あれから2週間
護衛の仕事が始まりなぜかすぐに乱太郎に捕まり
は組に連れて行かれたのが学園に来てから2日目
そして今日である




さーん!あの薬めっちゃ売れましたー!たすかりますー!」
「おーおー、どんどん売りさばいてきぃ、ええことや!」


ぐしゃりときり丸の頭を撫ぜる
嬉しそうに破顔するのを見るとやっぱりまだ少年だ
土井先生から訳を聞いたときはきり丸を思い切り抱きしめてやりたい衝動にかけられたが


「(いやそりゃもう苦しい死ぬって言われるまで抱きしめたけど)」


今はこうしてアルバイトを手伝ってきり丸の役に立とうとしてる
自己満足っていえばそうなるが




「やっぱ子供は笑って過ごすが一番やな」
「わあ!さん急に撫でないでくださいよぉ」



喜三太がにひゃらと笑う
なめくじの壺を大事そうに抱えているのにもっと笑みが深くなる
生き物を大事にする奴は好きやでー




「あ、一年じゃねえかー」
「あ、鉢屋三郎せんぱーい」
「不破先輩も!」



紺色の装飾に身を包んだ双忍が現れてお兄さんビックリ
ぽかーんと口を開けてみてれば片方の子が俺らに近寄ってくる



「庄左ヱ門、だれだー?こいつは」
「学園護衛のさんです!昨日伝達が言っていると思うのですが」


「ほら、三郎…昨日竹谷が言ってた…」
「あー、どう考えても不審者が出ましたって感じの報告の奴か」
「先輩!」




その言葉に鉢屋と呼ばれた人物をみる
パッと目があった瞬間仮面の奥に写る瞳に一瞬目を細めた
なるほど、双忍ちゃうんやな…




「まあまあ、庄左ヱ門…鉢屋くんの言うことはごもっともなことなんや」
「なに、偽善者ぶるの?」
「そないなこと言いはったって…しょんないやろ」



こういわんとなんて言うん?
不破くんと呼ばれた彼はオロオロと俺と鉢屋君を見て
は組の子たちは黙って成り行きをみている





「同じようなもんかぶってる同士…うまくやっていける思うたんやけど」
「ッ!」
さん…」



目の前に居た伊助の頭を撫で行き先方向を変える




「やっぱ、同族嫌悪っちゅうもんわ感じるんやろな、鉢屋君」
「お前」




「あ!」
「え、」
さん!」
「…消えた」





目の前から姿を消した俺の場所を見つめる鉢屋くんと
唖然とするは組の子たちと不破くんを木から見つめてため息を吐いた






「俺と似てる子っておるんやな…ほんまに」



もどる つぎに
一覧に戻る