「こりゃ裏裏山の樹海やな」
「ああ、よく上級生が夜実習で使うところですか?」
「…せや、罠とかバンバンある場所ってことや…」
「うげぇ、こえぇ」
嫌な顔をする2人に俺もつられて苦笑いをこぼしてまう
そりゃ上級生っつったら濃いメンバーばかりやから
きっと罠もそれぞれ個性があるんやろう
「例えば、あの木の下…一見何の変哲もあら辺木やけど」
石を投げて一番乗りやすそうな枝に当てる
ドォオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!
「「………」」
「こんな感じで木が爆発すんねん」
「…さん」
「んう?」
「生きて帰れる気がしません」
「僕も自信ないです」
「…まあ印もないとこやし」
しゃあないわな、と2人の頭を撫でてやる
「俺の後ろを必ず歩くんやで」
「「はい!」」
道なりに危ない罠を解除して先に進む
樹海とだけあって薄暗いそこは心がまだ一年生な2人には酷な光景やろう
「……、2人はその体になってどうや?」
「「え?」」
「ずっとそのまんまで居たい?それともはよ戻りたい?」
二人の顔は見ず進みながら言えば一瞬暗い気配を感じた
「僕は、戻りたい」
「ほお、その心は?」
「…早く成長したいし、早く先輩に追いつきたい…けど」
「…」
「心はまだこんなに子どもです」
心も大人になって、体もそれに伴って大きくなってが正解だと僕は思います
「うん…きり丸は?」
「おれは、このまんまがいい…早く大人になって稼いで金に困りたくねえし」
「ほんで?」
「強くなって、守れるものを早く作りたい」
「守れるものって?」
「学園のトモダチとか、せんせーとかいっぱい…」
「さよか」
俯く気配を感じ2人に振り返る
すこしその行動に驚いたのか目を瞬かせた2人の頭を撫でる
「少し、大人になったな…きり丸、庄左ヱ門」
真剣にものごとを考えて答える
そういうことができた2人は凄く大人だ
俺はきっと答えられない
守れるものを作りたいなんて思えない
守れなかったんだから
「心は早く大人になる必要なんてない、けど早く自立して迷惑かけへんように暮らしたい」
小さい子供はいっぺんにこの2つは考えられへんな、大きくなって大人になったな
そういえばニカッと笑う2人の頭をぐしゃぐしゃに撫でた
「ぼくもゆっくりでいいと思うよ」
「俺もおもうー」
パッと顔を上げた2人にきり丸と庄左ヱ門が驚く
大丈夫なの?と聞く庄左ヱ門に団蔵がニシッと笑った
降りた2人がいやー、ごめんごめんと笑っているうちに完全に日は暮れていた
「今日は野宿やなあ」
「えっ、まじ??」
「迷いつつ進んでるんや…当然のことやな」
ただえさえここは樹海でどういう構造かなんてしらへんし
少し開けた場所に休憩する
火を作り4人が俺と向かうように座った
「なんだかさんとこう近くにいるってすごいですよね」
「ただえさえ、普段は会えないからうれしいかもっ」
「なんやかんや言って女装の授業以来だもんなー」
「俺らの授業じゃそれくらいしか来てくれないっすもんねー」
嬉しそうに笑う彼らに俺も笑みを浮かべる
「さんってなんかこう目線が一緒くらいだとキレイですよね」
「あ、私も思った!さんっていつもは格好良くて頼れる感じだったけど」
「今じゃ、僕たちの方が身長もありますし」
「さんって実は可愛い分類だったんすねー」
突然そんなことを言い出す4人に笑みのまま固まった俺を許してほしい
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