23,成長しましたか4





「だってほら、さんの女装すごいし!」
「確かになあ、多分今のおれだったら食べるわ」
「食べる?」
「あー!庄ちゃんは聞き返さないくていいのー、団蔵!」
「いや、これマジだから」


「マジちゃうやろ、ボケ」




団蔵に拳を振りおろせばいってー!と蹲る団蔵
バカだろ、ときり丸が視線を寄越せば庄左ヱ門が不思議そうに団蔵を見る



「食べるってどういうこと?「庄ちゃーん!」」
さんを犯すってこと「お前マジ黙ってろ!!」」


「おお、ゆったれきり丸…!!」
「だってさんってなんか線細いし、色白いし。金髪俺大好き」

「(こいつ、もうだめだ)」
「(団蔵、心も15歳)」
「(あかん、こいつはあかん奴や)」
「…それでしたら僕もさんのこと犯したいですね」


「「「ぶほぉあ!」」」
「だろー?流石庄ちゃん!わかってくれる?」
「しょ、庄左ヱ門…お前…ばい菌うつったか?」
さんひどーい!」



「いえ、ただ…その犯すということが今団蔵のいったことに当てはめて決断するなら、僕も思ってましたし」
「えっ…!!」




純真にふんわりと微笑まれ俺を見つめる庄左ヱ門に顔が赤くなる





さんは細いですし、雪のように肌が白い…前から思ってましたし」
「〜〜〜ッ!…!!」
「それでもお強くて…いつでもどんなときでも僕らを守ってくれるさんがとても好きですし」
「っあぅ…ッ」



「庄ちゃん、やめてあげて」
さんが死んじゃうぞ」

「わー、さんタコみたーい、かっわいいー!」
「…こいつらもういやや」




いつの間にか隣に来た団蔵が俺の肩を抱き寄せてきて暖かい感覚が自分を包む




「なんやの…は組は積極的に育つんやなあ」
「まあ実戦経験が一年の時点で多いっすからねえ」



「自慢することでもないからな」




団蔵を引き離して庄左ヱ門の隣に移動する





「ほんともう…寝ろ」
「「「「えー!」」」」
「もっかい、拳骨されたいかクソガキィ」

「「「「オヤスミナサイ」」」」





4人で固まるようにねたを見計らって帰りの経路を探る





「どこもかしこも罠だらけだな…あんまうまくないのと、傑作品なのと…」




入り混じってて面倒やな
むしろこれが狙いなのやもしれへんし
うーん、難しい






さんッ」
「…庄左ヱ門」



「―――この先はもっと陰湿な空気がしますね」
「まあきっと五六年生の陰湿な奴が作ったんやろうな」



「わかります、もう誰が仕組んだかぐらい」
「…まあ庄左ヱ門の同じ委員会に一人おるわな」
「…言い返せません」





「庄左ヱ門は将来、なんになりたい?」
「将来、ですか?」


「せや」





考え込む庄左ヱ門に皆の
庄ちゃんってば〜の下りを思い出す





さんは、僕らの年齢のころ何になりたかったんですか?…あ、元の姿ですよ。」
「おれ?俺は、村長になりたかったんや」
さんは農民の生まれ?」

「ああ、せやで…農民の生まれ」
「北の方ですか?」
「もうあらへんよー」




軽く言ってから、あ…と庄左ヱ門を振り返る
驚いたように固まる彼にしまったとバツが悪くなる





「や、そんな驚かんでも「辛く、ないんですか」
「え?」

「自分の村がなくなって、辛く…ないんですか!?」





動きの止まった彼の顔を覗くとガッと肩を掴まれ顔が寄る
庄左ヱ門の純粋な質問なのに





「辛い…なんちゅーのは死んでいった人らがいう言葉や」




のうのうと生きてる俺はまるで裏切り者のよう
だから辛くなんかない






「辛いわけないやろ、なにゆうとんねんほんま」
「!」






ニコッとなるたけ彼を安心させるように微笑む
それでも引き寄せられた力に素直に従って彼の胸に体が収まれば昔のことが一気によみがえる





「もしかして、今まで…誰にも言ってなかったりしますか?」
「……」





庄左ヱ門の声が振動して体に響く
村がすべて更地になってもうたのは、若は知っている…
だからこそ、愛情を教えてくれて注いでくれた






「一人、一人ゆうた」






―――― よく、話してくれた…。お前は採用だ
―――― え?
―――― 元より決まっていたことだが…、頑張って話してくれたお前を守りたいし


―ーーー そういうなら、背中を、腕も目も全部を預けられる






「あん時、もう帰る場所は決まっとった」





今庄左ヱ門が俺を抱きしめてるような温かさがずっとあったんや
どんなに遅く帰っても迎えてくれる忍隊

非番の時に構ってくれる城のみんな





「2つも、帰る場所を無くしてもうたんや」
「…ッ」





強い灰の匂い
頭巾を外したくなるような熱気
震える手のひらが、敵に向ける刀の標準が合わない





「…、堪忍な…庄左ヱ門」
「え」





こんなん、小さな子供にきかせる話やないんや
庄左ヱ門の胸の中から離れて庄左ヱ門の頭をポンポンと撫でる





「余計な話してもうた」
「あっ、そんな、そんなこと…!」
「堪忍」





困ったように眉を顰める彼を見ているのがつらくて
ちょいと探索してくると言い訳して逃げてしまった








さん。泣いてた」






庄左ヱ門がそんなことを呟いていたのも知らずに




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