26,昼寝の時間




「腰、痛いなぁ」
「あ、さん」




ガラゴロと音を立てて三木ヱ門が登場する
木の上からおー、と迎えれば彼もニコッと笑う




「どうや、ユリコの調子は」
「ええ、良好ですよ。このあいだだって〜」




始まった、三木ヱ門の長い長い火器の話し
けど、途中途中の雑学は面白くて聞いてしまうんのが俺なんやけど



「というわけなんですよ」
「ふむ、なら戦とかで役立ちそうやな」
「ええ、やっぱりそこら辺の鈍ら刀とかよりは全然使えますよ!」
「さよか」




木の下に降りて2人で話しているとザックザックと音が聞こえた




「おや?」
「きはちろー」
「また、穴を掘っているのか」
「穴じゃないですよータコ壺のターコちゃんです」

「また善法寺伊作先輩が落ちるぞ…」
「それもまた然りです」
「伊作大変やなあ」



喜八郎が三木ヱ門の逆、俺の左側に座る
穴掘りが疲れたようでフーッと息を吐きながら俺の肩に頭を乗せてきた




「こしょばゆ…、疲れたん?」
「少しばかり掘りすぎました」
「え、掘りすぎたん」
「げぇ…」



嫌な予感がする…、
ドガシャアア!!



「タカ丸さぁああああん!?!?」


「「…」」
「おや」


やっぱりかと
滝夜叉丸の声に向かえば穴に落ちたタカ丸がえへへーと笑う





「おまえ、ここ印がないではないかー!!」
「印の品切れです」
「品切れってなんだ!!品切れって!!」

「喜八郎…、」
「滝夜叉丸もうるさいなあ」
「なんだと…?」



喧嘩の始まった2人を放置してタカ丸を引き上げる




「大丈夫ですかー?」
「うん、綾部くんのターコちゃんは怪我しないようにできてるからねえ」
「学園内ですから」
「学園内でも掘ったらあかんやろ…」

さんがわざとじゃなく落ちたら検討します」
「……」




検討かいな、とはツッコミできなかった
縁側に座る喜八郎の隣に一緒に座る



さんって、本当に仕事してるんですか?」
「思いがけへんことゆうてくるなあ」
「こうやって僕らとゆっくりしていることが多い気がするんで」
「昼間っちゅーんは間者はすくないもんやで?」
「…そういうことですかー」


「でも、は手も綺麗だよねー」




タカ丸に手を取られ、まじまじと見られる
グイッとそのまま引かれたと思えばギューッと抱きしめられ細いしーと言われる




「む」
「いや、くっ苦しい…んやけど」

「綾部くんが離せばいいんじゃない?」
「タカ丸さんが離せばいいと思います」




両サイドから挟まれるように抱きしめられ息苦しい
それに加えなんの闘争心なのか力を強めてくる

あの、まじやめてくれへんかな




さん!だ、大丈夫ですか!?」
「お前ら離してあげれば?」




焦る滝夜叉丸に救出されてホッと息を吐く
むーとする隣の喜八郎に苦笑いを浮かべれば
彼は俺の太ももに頭を乗せてきた




「綾部!?」
「あー、綾部くんうらやましー」


さんに甘えていいのは僕だけですから」
「えー?それはズルいんじゃないかなあ」
「綾部!離れろ!!」


「三木に言われる筋合いはありません」
「おまええええ!」


「―――」




元気な奴らばっかやな
俺の前で抗議する三木ヱ門の腕を引いて俺の隣に座らせる

そのまま縁側の廊下に倒れて寝転がる
おー、と喜八郎の声とえっえっ?と焦る三木ヱ門の声をスルーしつつ目を閉じる




「お昼寝いいなあー、じゃあ僕はここ」
「!、タッタカ丸さんまで…!!」
「ええで、一緒に日向ぼっこしようやあ」




タカ丸が頭の方に周り俺の腕を枕に寝転がる
えへへ、と声を漏らして笑えばさんもかわいらしい声出すんですねと喜八郎に言われた



「〜〜〜〜、もうどうなってもしりませんから」
「そういいながらお前も寝転がるんだな」
「うるさーい!!」


「三木ヱ門、滝夜叉丸少しだまっときや…」




***





「、…疲れた」


実習帰り、学園に入った一番に伊作の疲れのある声が響く




「いさっくん、今日も絶好調に罠に引っ掛かりまくりだったな!」
「小平太のいけどんがなかったら助かってたところもあったけどね」

「というか、留三郎貴様ァ!!俺の獲物をとるとはいい度胸じゃねえかァアア!!!」
「うるせェ!!耳元で騒ぐなギンギン野郎!!」
「黙らないか、お前たち」


「「あ"ァ!?」」



黙れと言ったら騒ぐのか、と眉間にしわを寄せる




「…、四年」




長治のつぶやく声に全員で振り返る
視線の先には我が作法委員の一人である綾部喜八郎が
の膝の上で寝ている



「なんだアレ」
「無駄に神々しいな…」
「お、滝まで居る」



アイドルと言われる学年に加え、かなりの美貌を持つが寝ているんだ
通りすがる生徒もチラチラとその縁側を気にし
誰かは絵に取っている




「なんか羨ましいから私もねよー!」
「あ、おい!お前!!」


「私もまぜてー!!!」




どんどーん、と言って飛び込んでいった小平太に
全員が飛び起きるまでに時間はかからなかった




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