27,用心棒さんの憂鬱





「私はが好きだ」
「…俺もある程度は好きやで、小平太」


「それを俺らの前で言うんデスネ」

さんが男という前提は拭っていいんですか?」
「というか、お前さりげなく俺の豆腐食うなよ」



俺が五年生とごはんを食べている時
突然小平太がそう言ってきた

驚きのあまり豆腐を零せば、兵助の絶叫が聞こえて




「俺もさん、好きっすよ?」
「八は黙っとけ」



三郎に睨まれた八左ヱ門がグッと言葉を詰まらす




「どうしたんすか、小平太先輩…」
「実はな、「ーーーー!!!」




食堂が壊れんばかりの勢いで入ってきたのは珍しい




「い、伊作?」
「ど、どういうこと!?」
「え、え?」



!!あの小さくなった事件の時、曲者に色で薬草を買ったって本当!?」
「…なんやその変な情報(アイツ絶対に殺してやる)」
「いまきた曲者がを探しいて…その時に聞きました…」
「(絶対に殺す)」
「ぶっ!」
「うわあ!八きたねえよ!!」
さんが、色で…色?あれ?」

「雷蔵、大丈夫か?」





三郎が悩みだした雷蔵の顔を覗き込む
俺の隣の兵助の箸が折れる音も同時に聞こえた




「それが真実じゃなくともそうだともして、小平太はなんで告白?」
「アイツが、と私は相思相愛だからできるんだよとか言ってたから!」
「…へえ」




ひぃっ!とその場に居た下級生の悲鳴
すぐにしまった殺気に勘右衛門が苦笑いで俺を見る




さん、大丈夫っすか?」
「大丈夫にみえるか?」
「みえねーっす」





「ちょっと待て」






三郎の制止に和やかだった一瞬が拭われる






「小平太先輩は曲者がと相思相愛だからヤッたって思ったんすよね」
「三郎、言葉が汚い」
「…んで、に告白したということは…」


「私もと、モグガァッ」
「下品な言葉をここで発さないでくださいね」
「へっ、兵助…」



豆腐を口の中に入れたまま、小平太が俺の目の前に来る
兵助の絶対零度の視線にもスルーな彼が本当にすごいと思う




「もがっ!もほほふ、私もシたい!」




ガッ!
バキィッ!
ゴッ




「…、。それでさっきの話は本当なの?」
「――、俺みんなが忍者してるとこ久々に見たと思うで」



伊作の威圧に一瞬グッとなるけど
言えたもんやないし
あーうーと視線を迷わす



「はぐらかさないの!今は僕らしかいないから!」
「ゆうと思うかド阿呆!!」




その場から瞬歩で立ち去る
ああ、俺の夜ご飯ー

三郎たちに殴られた小平太が心配やけど
鬼のような伊作と何故か怒っている雷蔵と兵助から逃げるにはこれしか方法ないし




「というかあのド助平話よったな…」




許さん!!





「なにが、許さないんだい?」
「ひっ!どっ、土井先生!」
「キミが私の気配に気づかないなんて…どうしたんだい?」
「い、いやぁ…土井先生こそ…」

「私は夜ご飯の帰りでね」
「へえ、夜ご飯の…夜ご飯ッ!?」




じゃあ、さっきの話しは聞いてはったんですか!?
もちろん、聞いていたよ



あっさりと答える土井先生に開いた口がふさがらない
ニコニコと笑う土井先生は気にしていないのか
もしくは怒り絶好調なのか
うちの生徒にふしだらな教育だ!とか怒られてまうんやろうか

いやいやでも以前に色の帰りにあったこともあるし、いやでも今回は訳が訳だし




、」
「はっ、はいぃ!」




ガッと肩を掴まれ土井先生の手がそのまま腕に下がる
グイッと引っ張られ廊下を歩きだす




「えっ、ちょっ…土井先生?」




土井先生の部屋に着き障子が閉まる
そこまできてピタリと止まる足に土井先生の顔色をうかがう

完全に怒っとるやん!!
土井先生には嫌われたないなぁ





「はい…」
「もう少しあなたは自分を大切にしろ!!」
「はいっ!!…ってはい?」




思わぬ発言にえっ?と顔を上げる
怒ったような悲しそうな
どっちともつかない表情に目を見開く



「なんでそんなに自分ばかり犠牲にするんだ」
「えっだっ…え?」
「…色を使ってまできっとあの子たちは戻りたいとは願っていなかったはずだ」
「でも、すぐに戻りたいやろうし」
「〜〜〜」
「ッいだ!」




ゴッと降り下げられた拳に頭を押さえる
その場に蹲れば上からふわりと土井先生の匂いが擽った




「心配なんだ、が…」
「土井センセー?」
「忍者は色も使う、それは仕事だからなにも突っ込めない…けど」
「?」
「それを見て悲しむ人間がいることもわかってくれ」
「――――、どいせんせいは」
「?」
「土井先生は悲しい?」


「……〜〜〜ッ!」




恐る恐る覗き込めば土井先生はわたわたと気配が焦りだした
一瞬間があってまた肩に手を置かれる
顔は月明かりで首から上がお互い見えるだけ




「悲しいし、言えば…二度とさせたくない」
「!」
「そういうを守りたくなる」
「えっ、えっ?」



そんな言葉待ってなくて驚いて身を引けばグッと引き寄せられる
土井先生の胸の中におさまればギュッと抱きしめられる




「学園を守るを…私は守りたい」
「どっ、土井先生…」
「私は君の先生ではないよ」



クスクスと頭上で笑われてしまえば、どうしようともがくしかない



「じゃ、じゃあ…半助…さん?」
「!」
「はんすけさん、苦しい」
「あっ、ごっごめ!」




離れた瞬間目が合ってお互いが顔が真っ赤なのもわかる
ピタリと体のバランスがお互いに取れて
見つめあったまま目が離せなくなる



「とにかく、…そういう…ことです…」
「きっ、気を付けます」



お邪魔しましたーと障子を開いた瞬間





「あ」
「「「「「「「あ」」」」」」」
「………どうし…って、お前たちここでなにをーー!?!?」


「い、いやあ…庄左ヱ門が宿題を教えてもらいに行くってついていったら」
「途中で乱太郎、きり丸、しんべヱに会って」
「じゃあみんなで聞きに行こうってみんな誘って」


「「〜〜〜ッッッッッ」」




「お、」
「「「「「「「「「「「お?」」」」」」」」」」」
「お邪魔しましたぁあああああああああああああああ!!」
「あ、ッ!」
「「「「「「「「「「「さーんッ!!」」」」」」」」」」」





ダッシュで走りさらせてもらいました



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