「…――」
「……」
「おー!姉ちゃん別嬪だなあ!」
「兄ちゃんは良いとこの坊ちゃんかあ?」
「「(帰りたい)」」
ドンッと出された酒瓶
三郎をチラリと見て飲める?と顔で聞けば、首を縦に振るう
近くに奴らが居るから矢羽根は飛ばせない
「私は飲むぞ」
「!?」
「お、兄ちゃんいいねえ!」
グイーッと酒瓶を持った三郎が一気に飲み干す
ええええ?!なにしてはるんー!?
いつも細めている目をまた細めて三郎が一瞬ふらつく
ひっ!なに酔うとるんほんまに!
さぶろー、俺だけ素面にさせへんでよー
「(あれ?)」
連れてきてくれた奴らがおらへん
食べ物を食べるフリをしてあたりをキョロリと見回せば奥に進む影
「……」
「おー!兄ちゃんいい飲みっぷりだなー!もっといけー!」
「おっとっと!俺もまけねーぞ!」
上手く三郎が周りの目を引き寄せているのか俺には全く目もくれない
これは作戦か?ととりあえず有難く利用させてもらって彼らを追う
「広い、居酒屋なんですねー」
そんなこと言いながら奥へ奥へと進む
バタンッと扉が閉まりそこにはもう誰も居ない
「(密会の場所に使われているのか?)」
天井を確認して屋根からの位置を計算する
なんなら今からでも忍びこんでしまおうか
否、どうせ夜中に帰ってくるんや。そこで情報を天井から聞いてしまおうか
「…どうか、しましたか?」
「!!」
突然降りかかる声に向けば
客として来ていたお兄さんが心配そうに俺を見る
「あっ、ああごめんなさい…私、ちょっと酔っ払っちゃって」
「え?大丈夫ですか?付き添いましょうか?」
「えっ!?いっいいですよ、そんな…」
「付き添って、あげますよ?」
「へっ?……むっ!」
「可愛いお嬢さん…、私と一緒に過ごしましょうね」
やっ、やべえ
口を布で押さえられたけど息をしないように耐えていたものの動きづらい着物に手こずり
思い切り薬を吸い込んでしまった
歪む視界で見えたのは、さっき後を付けていた奴らと一緒に居た人間だった
***
「―――…ん」
目を覚ませば、広い天井に心地の悪い畳
あれ、もしかして敵の本拠地ちゃう?あれ?はいっちゃった?
「(あかーん)」
さぶろーかんにーん
縛られる腕、
足の感覚で足袋を履いてることを確認して
足袋の中から小刀を取り出す
「よっし」
縄を切ったのを確認して
立ち上がりあたりを見回す
天井は…、上がれそうやな
軽い感覚で天井を開け中に潜る
「(うわっ、)」
きったな!!
ありえへん、と思いつつ裏を進む
気配のする方へ進み聞こえてきた会話に耳を向ける
「忍術学園には大量の忍たまという忍者を目指すものがいます」
「そこを狙えば、大量の忍者が手に入ると思います」
「しかし、舌などその場で切られたりするのでは?」
「確かに、忍者は自分にそぐわなければ自害の可能性もあります」
「ならば死ねぬようにすればいい」
「…どういうことで?」
「小さな忍たまを攫い、歳をとった忍たまを使う…それでいいだろう」
「なるほど」
「…」
出てしまいそうな殺気をしまい、体を抑える
ダメだ、こいつらは主犯ではない
主は誰だ…聞き出せ
「そういえば、拾ってきた女はどうした」
「ああ、向こうの部屋で寝ている」
「…、相手をしにいく」
「皆で行くか?」
「ああ、それも面白そうだな」
好都合や
まとめて始末してやる
部屋に戻り元通りに手首を縛り口を布で拭う
障子があいたのを見て彼らと目が合い
ニヤリと笑う彼ら
「お、起きとるやないか」
「……」
「旦那は酒に潰れて、女はここで誰しれぬ男に抱かれる…面白いことだな」
「――ひっ」
強がる自分を演じればニッと口角を上げる
ああ、面白い近づいてきたこの中での親分が手首を掴んだ瞬間
縄を切りソイツの首元にクナイを宛がう
「動くな」
「「なっ!!」」
「動いたらコイツが死ぬぞ」
「……お前」
「忍者だったのか…!」
「さあ、どうだろうな…まあ俺としてはお前らは男の趣味があるのかと聞きたいんやけど?」
「なっ、あっ…」
「さあて、どんどん吐いてもらうで…?」
今度は俺がニヤリと口角を上げる番になった
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