33,足手まといなんだ






「あっちで爆音がしたぞー!」
「兵を呼べ!」



案外ちょろいもんやな
流石と言うべきか、大きな城に比例する人数




「まあ、余裕なんやけど」



城の屋根に乗り誰も居ない倉庫室に入り込む
降り吐いたそこは埃まみれ




「…お土産に巻物もらおうか」





きっと六年生は嬉しがるやろうなあ
倉庫から廊下を覗き目的の場所まで走る




目的の場所まで走っていくと段々と手入れの行き届いてないような
少し汚い場所に着く



「(こないな場所)」




ギリッと奥歯がきしむ音が鳴りそのまま歩く
兵も少ないというか、ほとんどが寄りつかないのか


たまに見かける人間の袴にはここ'ダイチ城'の家紋ではない



「(生捕った奴らを放り込む場所っちゅーこったな)」




屋根裏に入り木をつたい下を見る
多くの部屋がある一室

そこに居た人間を目にとどめて目を見開く
2人の人間が視界に入り、ああ…良かったなんて言いながら思わずすぐに降り立ってしまった




「―――こら、…なんで来たんだ」
「お前ッ…マジびっくりした…、何してんだ…!!」




ゆっくりと振り返る若と側近に最近、涙腺が緩んだんじゃないかと思うくらい視界が歪む
口を覆っていた頭巾をずらし




「若ぁ…」
「なに、どうしたのお前」

「若ー!」
「おおっと…」





抱き留めてくれた若に後ろの側近が笑う





「久々だな、…ちゃんと飯は食えてるか?」
「もっもちろんです!!若たちこそ…食べれてますか…?」


「ああ、意外に普通の生活でな」
「〜〜〜、どこも痛くは、ありませんか?」
「ああ、無事だ」


「それより、お前…ココに居て大丈夫なのか?」
「すぐに戻ります…今の主人にも明け方には戻るとの約束ですから」
「…大川殿には世話をかけるな」


「―――、若…ここから出ませんか?」
「あ?」
「今なら、場内が手薄です…抜け出せるはず…!」
「―――、


「城の皆集めて…!はやく」

「――、あ…でも怪我してる方とかいたらどうしましょう」
!」

「!」





肩を掴まれ若と目を合わせる





「良く聞け、
「―――」
「ここに居る、城主は皆優秀な忍び組織の持ち主
 おそらく、我が城が狙われたのも、忍び隊が狙いだ」

「だが、若を尊敬する我が忍び隊はダイチに行ったものの自害」
「上手くいかなかったのが余程ムカついたのだろう…若のように人質を取り、忍びに働かせている」


「聞いたところ…、…」
「は、い」



「お前は今血眼になって探されている」
「―――え」
「最近学園の周りが騒がしくないか?」
「え、ええ…」
「お前を探してダイチが集めた凄腕の忍者を選抜させている」




「ようするに俺を連れてったところで、お前と俺はともには暮らせぬ」
「――――」
「足手まとい…だしな」
「わ、……か?」

「――、ともかくだ
「はい」
「ダイチを一気に蹴落とすのを狙え」

「蹴落とす…」
「今ダイチはタソガレとの戦を練っている」
「!?」


「そこが狙い目だ…、この城を崩落させ…ここにいる人質を解放させれば力になる」
「ダイチの人間の目を盗んで話はしている」
「城主は頭が悪いからな」




「わかったな?」
「―――――、はい」





せっかく会いに来たのに
シュンと肩を落とせば若が俺を抱きしめてくれて




「よくここまで来たな、
「えらいえらい、ちゃんと飯くえよ?」
「はい」




では、と屋根裏に飛び移る
城を抜ければもうドップリと深夜になっていた






「――、」





ダイチとタソガレの戦





「どう思いますか、利吉さん」
「流石だね、わかった?」
「わかりますよ…城の中までついてきてどないしはったんですか?」
「いやあ、がまた無茶するんじゃないかと思って」

「俺も若も気付いてましたよー」
「流石はの主だね。隠しきったと思ったんだけど」
「っふふ、ムリやと思いますよ」



隣に並んだ利吉さんにどないしたんですか?とまた問いただせば




「タソガレドキの戦に潜り込むの?」
「ええ、いつ戦が始まるかを調査しにいかなあかんので」
「しかし、タレガレドキは今、オーマガトキと戦中だよ」
「…、それでも見に行かな…」


「…そう…学園長先生にはなんていうの?」
「そろそろ、夏休みが始まりますから、外へ出させてくれると思うんで」
「夏休み中に?」
「はい、きっとオーマガトキとの戦が終わったその時が…」


「準備の始まり…ね」
「…」






君は無茶しかしないね、と言われ苦笑するしかなかった






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