「君の勘もいずれはタソガレに影響が出そうで恐ろしいよ」
「そこの時点で俺を殺さない雑渡さんはもう色の術にかかってますよ」
「そうだね。でも仕方ないだろ」
じゃあ部下が五月蠅いから、と去って行った雑渡さんに手を振る
「五月雨ー、五月雨―!」
「はいはい、城主…どないしはったんですか?」
五月雨と呼ばれ俺はそちらへ向かう
しんべヱにそっくりな城主の元へ降り立てば真っ青な顔で俺を見ている
「タソガレの城主に文は届けたか」
「ええ、届けてきました」
「では、私は向こうに行く支度を…」
「戦の収集はどないしはるんですか」
「そ、そのようなもの…!ほかにやらせれば良い!!」
「―――、御意に」
側近を連れ城に翻していった城主
気配が遠くなったところで空になった本陣に一人なだれ込んでくる
「殿ぉおおお!そこまでタソガレ軍…が…ッて、え?」
「もう戦は終わったようですよ」
「忍者隊…、殿は…!?」
「…タソガレ城に行くそうです。貴方たちはタソガレの配下になるでしょうね」
顔を真っ青にした彼に冷徹な顔を向けてしまう
自分には関係ないが…とふと考えるけど
その場を去り急いでタソガレへ行く準備をする
「(使用した砲台…兵士の数、武器の補充期間を計算して)」
全部をダイチの城主に漏らせば、計画は成功だ
「はにゃぁ?」
「何者だ!!」
「わあ!見つかっちゃった!!逃げなきゃ!」
「―――、」
聞き覚えのある声に覗き込めば城を眺める少年の姿
「きっ…!!(喜三太!!)」
大声を出しそうになる口元を抑え彼を見る
腕を引かれ場内に入って行く喜三太を見て目を見開く
「(どういうことや…、)」
戦場では伊作ぐらいしか会ってないのに喜三太に出くわすなんて
なんちゅう夏休みの課題を与え取るんや!
城内に入って廊下を走る
兵士の人たちには走りまわるなよー、と笑われるがそれどころじゃないし
というかなんでそんな堂々と入ろうとしたんや喜三太!
「あ、ちょっ!すんません!さっき入ってきた少年どないなったんですか?」
「ああ、牢屋行きだ、なんでも殿にナメクジをぶちまけたらしいぞ」
「ぶち…ッ」
な、な、なんちゅうことを…!
言葉を失っていると俺がナメクジを気色悪いと思って固まっていると勘違いしたらしく
まあ気持ち悪いよな、と意味のない慰めをもらってしまった
「(ああもう!)」
夜中まで待ち、牢屋のある地下に向かう
「五月雨、忍びのお前がなんでここに?」
「殿から尋問をしろとの伝えを受けた」
「そうか、おい、そっちはナメクジだけの牢屋だ」
「あ?ナメクジだけ?」
「別々に閉じ込めてある」
「…、あっそう」
面倒なことになりそうやなと思いつつも牢屋に入れば
喜三太が真っ青な顔をして俺を見た
そりゃホンモノの忍者に、しかも殺気を当てられちゃあビビるわな
「…、喜三太」
「!はにゃっ!…ッぶ!」
名前を叫びそうになった喜三太の口を押え矢羽根を飛ばす
少しわかったようでコクコクと頷いた喜三太にホッと息を吐いた
「(喜三太、聞こえてるか)」
「(すこし)」
「(…わけあって俺はここにいる、深くは聞くな)」
「(はい)」
「(出してやるから俺の言うとおりに暴れろ、嫌がれ、ええな?)」
「(…はいぃ)」
シュンとした喜三太に大丈夫やで、と笑いかけ
兵士に声をかける
「この子供になにか罰を執行させたい」
「罰ゥ?」
「なにか、やらせたいことはないか」
「いっいやだよ!ぼく、!!ナメさんと離れたくないよォ!」
「「……」」
そこかよ、とのツッコミは後にして
考える兵士がハッとした
「なら、俺らの雑用だな!今は戦後で人が少ないんだ、手伝いっちゅー形でよ」
「おお、名案だな…良かったな。ガキ」
「〜〜〜〜(さん怖い…)」
もう一人の兵士に連れられ喜三太が牢屋を去っていく
まさかの敵の多いところに行ってしまったのは想定外だがまあ上々やろ
「雑用ってなんだ」
「最近窓から見える池にうまい魚が居たりすんだよ、それを狙って撃って食うっつーのが流行っててな」
「…暇やな」
なんとかなるとええなーと思いつつ
利吉さんに頼もう…とその場を後にした
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