38,本当に嫌になる




「園田村に着くんわ明け方やな」
「―――その返り血取らないとな」
「せやなー」


「で、なぜ利吉さんに怒られたんだ」
「まだ小さい子おるのに血まみれで帰ってくるなって怒られた」
「嘘だな」

「…嘘ちゃうよー」



しんじたってーとニヘラ笑いするに足を伸ばす
どわっ!と声を上げて木に降り立ったがびっくりしたやないか!とまた私の横に並ぶ



「顔色が悪いぞ」
「暗いからちゃう?」
「はぁ、なんで隠すんだ…」
「隠すだなんて、なぁんも隠しとらへんて」



「私がいつ、嘘を吐けと言ったんだ」
「ぬーん」






***




園田村が視界に入り仙蔵が小屋に入って行く
それを視界の端に留めくるりとあたりを見回した




「―――(砲台が5つ、すでに大砲は設置済みか)」





慣れてない武士だ、攻撃が明け方なのはしかたないが




「雑渡さんはこんなとこでなにしてはるんですか」
「あれ、バレた?」
「………ええ、バレバ…レ…です」

「―――、腹。斬られたの?」
「ッ、」





一気に疲れと失血が起因の貧血がくる
ジクジクと痛む腹と足に姿勢を保ち雑渡さんを見れば




「ほーたい?」
「簡易的にね、私のを分けてあげるよ」
「…、」




抱き留められた暖かさに不覚にも意識を沈めそうになったのは
この人には黙っておこうと思う






「随分とふかくやられたね」
「――不本意」
「君が不本意でここまでやられるとは思わないけど、まあいいよ」
「…雑渡さんの忍隊…ここに皆いるってことは、今回の攻撃は参加なしなん?」
「あれ、わかった?」
「わかる」
「―――礼だよ、キミと伊作くんにね」


「――…うちの大事な子たちに勝手に接触するのやめてもらえませんか?」
「うん、標準語厳しいね」



「包帯」
「ん?」
「おおきに」

「どういたしまして…」




瞬歩を使いその場から消えれば
その場に風が舞い、雑渡さんの頬を包む




「――、本当あの子を守るにはどうしたらいいのかね」






暫く周りを観察して、忍たまの皆が作った防護壁を眺める






「あ、半助さん!」
「帰っていたのか、無事か?」
「ええ、喜三太たちは無事に厚木先生に保護されましたんで、」
「それも大事だけど、お前もだよ」
「おれ?」
「ああ、大事な一人だからな」


「―――、怪我ひとつ負ってないですよ」
「流石だな」
「ええ」




半助さんの優しさに心から嬉しさがにじみ出る
愛されてるんだなって、本当に思ってしまう




「(そんな感情もっても意味あらへんのに)」




それでも、前を歩く半助さんをジッと見る
薄っすらできている隈とか、一瞬おぼろげな歩き方をみればわかる



「(大事にされていて)」






――――それが、少しだけ嫌になる






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