「土井先生」
「はい、なんですか?」
難しい顔をした照星さんが私の肩を叩く
「少し、あの子に注意をかけた方がいい」
「え?」
あの子と指差した先にはが居て
い組とじゃれているのが見える
それだけを言って虎若の手助けに消えた照星さん
「――、?」
よくわからない、いつもとかわらない彼に眉を顰めるだけだった
「(まずいかもしれない)」
目の前がクラクラして、しびれ薬がきれてきたなと感じる
救護室に言って乱太郎にもらいに行くか
「らんたろー」
「!、さん!?怪我したんですか!?」
「ちゃうちゃうー、しびれ薬とかってあらへん?」
「護身用に作りましたけど、必要なんですか?」
「うん、ちょいとな」
「あんまり無茶しないでくださいよー」
「おー」
受け取って乱太郎の頭をぐしゃぐしゃーと撫でれば、ふにゃんと頬が緩んだ
それを見てフッと笑みが浮かんで救護室から離れた
「いま、さんの手…震えてた気がするんだけど」
私の気のせいでしょうか
そう首を傾げる乱太郎には気付けなかった
ドォオオオオオオオオオオオンッ!
大きな音が響き水が流れる音が聞こえる
「上手くいったか」
「そうみたいだね」
「――、なんでこないなとこでお茶しとるん」
「いやあ、行楽日和」
「…、あんたなぁ」
「もどう?」
「遠慮しときます」
「つれないねえ」
雑渡さんが射抜くように俺を見る
今から向かおうとしているところ、バレてもうてないか
冷や冷やする
「ほんなら、また」
「―――うん、またね」
さっさと姿を晦ましてしまった方がいい
「よかった」
「ああ、終わったなー」
「さーてお前たち帰るぞ!」
ホッとして息を吐けば、善法寺伊作先輩がお疲れと言ってくれた
「乱太郎ー!いくぞー!」
「いまいくー!」
「乱太郎…!」
「らんたろー!!」
「田村三木ヱ門先輩!虎若ー!」
息を切らして走ってきた2人に大丈夫?と声をかけるがバッと二人が顔を上げて
「さん見なかったか!?」 「さん見なかった!?」
「えっえっ?」
「さん、凄い怪我をしているらしい」
「怪我…?」
「照星さんが言ってたんだ」
「さんをよく見ていた方がいいって」
「怪我をしているらしからと…」
怪我をしている
あの時来たときにはもしかして怪我をしていた?
「――、そういえばさんしびれ薬貰って行ったよねえ?」
「!」
伏木蔵が何か気付いたようで私がどういうこと?と問えば
田村先輩が真っ青になっていくのがわかる
「自分で飲んだんだ」
「え?」
「しびれ薬は体をマヒさせるということ、つまり、いくら怪我を負っても痛みがマヒしてわからない」
「!」
「じゃあ、さんはどこに…!」
「先輩たちにも言った方がよさそうだな」
「わっ、私…先生たちにそうだんしてくる!」
先頭を歩いていた私は踵を返して先生たちの方へ向かう
田村先輩も他の先輩に聞いてくると去って行った
「土井先生!」
「ん?どうした?喜三太たちとはあともう少しで合流できるぞ」
「ちっ違うんです!!」
「?」
「さんが怪我をしているはずなのに見当たらないんです!」
「なに?」
「しびれ薬を貰ったのを見たのが最後で…」
「―――、しびれ薬…、ともかく忍術学園に帰った後に考えよう」
「は、はい」
土井先生の真剣な顔にびくつきながらも
私は喜三太たちと合流に足を速めた
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