「タソガレ軍が優勢、進軍はもう城前まで来ている」
「つまりその隙を狙ってを奪還ですな」
「しかし、は相当城主に気に居られている様子」
「彼ならを横にずっと置いておくでしょう」
「下手に飛び込めばの命も危ない」
「ならば、をあやつの横に置かぬように嘘の情報を漏らせば」
その言葉にガタガタッと六年生が立ち上がる
私の横に居た伊作先輩もだ
『私(俺)が行きます!!!』
「落ち着け馬鹿者」
山田先生の言葉に七松先輩が落ち着けない!と叫んだ
金吾が、七松せんぱぁいと切なげに呼ぶ
「囮でもなんでもする!!特攻隊だってしてやろうではないか!」
「同意見だ、闇雲に突っ込む気はならないが遊動ならできる」
立花先輩も立ち上がりそれなら、と五年生の鉢屋三郎先輩が立ち上がった
「私がやる」
「ーー、それがいいだろう」
山田先生が頷き鉢屋先輩の肩に手を置く
「不破雷蔵、立花仙蔵はダイチ忍者隊に忍び込み、鉢屋三郎は大地場の側近になりすませ、
5,6年の者たちはタソガレ、ダイチのそれぞれの足軽に混ざり隙をついてダイチの城主を捕える」
『はいっ!』
「山田先生、私たち下級生は…」
「お前たちはを出迎えてやってくれ」
「え?」
「を迎えるのは至難だぞ…あいつは自分の思ってたことと違うことが起こると帰りたがらないんだ」
さんがクスリと私を見て笑う
わがままなガキだな、と言う姿はとてもさんを大切にしていることを理解した
「では、配置に着け…!」
その言葉で上級生の姿が消える
その場に残った金吾と私は目を合わせ苦笑した
大丈夫
大丈夫だよね
だって、不運でも六年間生き延びてる幸運な先輩だし
おう、毎日のように死闘を繰り広げてる委員会の委員長だし
「ーーー、大丈夫」
立花先輩の合図に毒を持った針を投げる
上手く当たったみたいでドサリと倒れたダイチ忍者
片割れが驚いてキョロキョロとあたりを見回すのを立花先輩が口元に布を当て魂を捕る
「やったな」
忍び服を剥ぎ取り白い着物を着せ森に投げる
ダイチの装束に身を包み立花先輩を見れば頷き歩き出した
「おい!おまえたち!さんがお呼びだぞ!」
「…、わかった」
「どうした、覇気がないな」
「そうでもない」
案外元気な奴もいるものだと思いつつ城へと侵入する
侵入したところで背後での合図が聞こえる
誰かが城にはいったことの合図だ
自分たちの護衛に着いた中在家先輩と雷蔵が視界の隅に入りホッとした
「さん、これで忍者隊が揃いました」
「そうですか、ではタソガレ軍隊の対応について配置を決めます」
タソガレ忍者隊にほとんどの人員が投入され、私と立花先輩もそちら側になった
逆に動きやすいと口元が一瞬緩んだ
しかし、をチラリと見れば無表情で、訛りのない声
「ーー、私は常に城主の傍で警護に当たる…ではそれぞれにつくように!解散!」
はっ!と承知の声をあげ、を見た瞬間目があった
難しそうな顔、私のしらないの顔だ
「……、早く行け」
「はっ…はい」
こんなに近くに居るのに、遠い
考えるようなしぐさ
最後まで視線を感じて、もしかして気付いてくれた?なにしてるんやって笑いながら怒ってくれる?
立花先輩もそれに気づいたようでピタリと廊下で足を止める
「ーーー」
「立花先輩?」
「なんでもない、先を急ごう」
「…はい」
さんは来てくれないし、怒ってもくれない
冷たい目を思い出して伸ばした手をジッと見るさんを
「(目を反らしてしまった)」
「ーー、…戦況はどうじゃ?わしの計画通り、タソガレ城主をこの城で殺すことはできるか?」
「難しいでしょうが、やりましょう。それが望みとならば」
「っくく、良い見世物になる」
酒を煽る主人に酒を注ぐ
背後で聞こえた爆破音に合図の狼煙
始まったんだ、片隅で感じながらも城主に酒を煽った
「良い味の酒だ」
「そうでございますか」
もどる つぎに
一覧に戻る