47,砕けた敵





!」
さん!」
「無事だったか…!」

ーーー!!」




と木の陰で隠れていれば聞こえてきた声
ハッと顔を上げるのもつかの間、善法寺先輩に私ごと抱きしめられてしまった



「ふっぎゃ!」
「ッ!ッ、顔を見せて…ああこんなところに切り傷が、きれいな顔なのに…よし、留三郎やはり大地場は殺そう」
「落ち着け、伊作…」

「センパイ、私も居ます」
「うわっ、ごめん鉢屋…!」
「俺にはあやまらへんのか…」



チラリと雷蔵を見れば、ハッとした表情でを見てうるりと顔を歪めた
あ、ちょっと何その顔可愛い


さぁあああん!」
「ふぶぅっ!」
「もっと、もっと訛って!」
「なっ、なんなん…雷蔵…」
さぁん…!」


「ちょっ、どないしてん…」




の腕の中で泣き腫らす雷蔵の頭を撫でる
困ったように眉を顰める中、中在家先輩がと雷蔵の腕を引いて奥に投げた

えっ、と思うのもつかの間…七松先輩が俺と兵助を抱えて後退した



「捕えよ!」




そんな声が響いて前を見ればダイチ忍者隊の面々
気配なんて感じなかった!と心中で叫べば、矢羽根で六年生が会話するのが聞こえる



「(留三郎、を任せた)」
「(ああ、尾浜…援護を頼む)」

「(わかりました!)」
「(先輩、委員会のオオカミを連れてきています…使ってください)」
「(ああ、ありがたい)」




食満先輩がと雷蔵の腕をとり、走りかける
瞬間
に縄が飛ぶ、それに気づいたが雷蔵と食満先輩を突き飛ばしクナイで弾き返す




「、…契約を破る気か…」
「ーー…」
「お前にはまだまだ働いてもらわんといけない…ここで全員生け捕りにして閉じ込めてしまおうか」




お前が裏切り行為をするたびに一人、また一人殺すとしよう
この状況でまだ笑う大地場にチッと思わず舌打ちが出る

七松先輩が私と兵助をおろし前にでる




は渡さん!」
「ほお?そいつはお荷物だぞ?私はそいつが生きる限り…追い続ける」
「なら、貴様が死ねばいい」



立花先輩の早い動きにビクリと大地場が体を揺らす
キィンッと刃のぶつかる音


目の前にはダイチの忍者隊




「数だけでは、我々には勝てんぞ…!」
「……、まきびしを」
「あっ、はっはい!!」





自分の懐からまきびしを取り出し、ばら撒く
兵助がその間に手裏剣を大地場に向けて投げる



キンッ!と弾く音に、数だけの忍者が…と言葉を吐き捨てた



「三郎、一気に大地場を叩く…、」
「先生方が来るのを待った方がいいんじゃないか?」

さんを狙っている忍者が複数いる…、時間がない」



「ーーーッぐ!」




ズシャッと自分たちの背後で潮江先輩が地面に叩きつけられる
それを覆うように忍び刀を曲者が振りかざし、またそれを七松先輩がカバーする





「先輩たちはほかの曲者からを守るのに必死だ」
「…勘右衛門と雷蔵にを任せて」

「ああ、私と兵助と八左ヱ門で叩く」
「そうしよう…八!」

「ああ、聞こえていた…!行くぞ!!」





三方に散って大地場の目の前に向かう
その間にも曲者や護衛兵に向かい合うがそんなの実習で慣れていて




「私に勝てると思ったか…!」





手甲鉤を振りかざしながら進む
兵助たちの矢羽根からは、かなりの数で苦戦のようだ




「(ならば、私が斬る…!!)」





頼んだ、と聞こえ
大地場の目の前に来て手甲鉤を振りかざした





「大地場!!覚悟!!」





一気に振りかざした刃先にはが居て
自分でも驚くくらい
切り裂く音が耳に劈いた



***





さん、ここを離れよう」
「…でも」
「大丈夫!上級生なら…さん…頼るって決めたんでしょう?」
「ーー、勘右衛門」




コクリと勘右衛門の言葉にうなずいたさんが立ち上がり一瞬みんなを見て反対側に走った





「雷蔵!上だ!」
「うん!」



手裏剣を複数投げ抵抗する
勘右衛門に腕を引かれ急いで!と急かされるさんの表情は心配だという表情其の物



「…、数は6人…頑張れば走り抜けられる」
「そうだね、勘右衛門…左」



雷蔵の声にスッとクナイを投げる
弾き返された音に振り返り、忍び刀を抜く



さんさき行ってて」
「かんえもっ「良いから!!先生を呼んできてください…!!」

「ーーー、わかった」





気配がスッとなくなる
ホッとして周りを見渡し息を吸った





「怒らさないで、もらいたいんだけどなあ」




彼は震えていた
怖いのに怖くないと笑っていた

そんな彼に守られてきたのは紛れもなく俺らで
あの実習の夜、呼んでも居ないのに来てくれた
怖かった一瞬がすぐに安心になったのは




さんが居てくれたからだ」



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