「!」
「伊作…!」
「無事かい?」
「ああ、でも五年の皆が…っ」
「大丈夫、先生を呼びに行こう」
「ああ」
は安堵の笑みを一瞬浮かべで走る
追ってくる奴らを何人か伸して進むけれど
「多すぎ!」
「忍者をそこら中から集めたんだ、当然だろう」
「これ、押し返されてる」
「せやな…城の方に戻って来とる」
後ろをチラリと見ればキンッとクナイをはじく音が聞こえてくる
数が多くては後退しながら行くしかないのに
「小平太たちはまだ来ないのか…!」
「ーー、伊作!!!」
の声が間近に聞こえ体を包む
驚いての服を掴もうと思ったけど急速にが離れた
「へっ?!」
驚いて前を向けばが縄に捕まっているところ
ッ!と叫ぶ前に目の前にほかの曲者が降ってくる
刀を振りかざされから離れてしまう
「ーー、!!!」
「伊作!」
目の前に留三郎が降りてきて、どうした!と私の肩を掴んだ
「留三郎…!が…!!私をかばって!!」
「…ッチ、ここは任せるぞ」
「ああ!」
それだけでわかったのかを連れて行った方向に転換した留三郎
の気配が遠くなって苦しい感情が生まれるのは
離れたくない、怖い
「もう、どこにも連れてかれるのを見たくないんだ」
ただの我儘なのかもしれないけど
「―――待て!」
「留三郎!クナイで切れ!」
「ああ!」
に言われたとおりにクナイを複数投げる
避ける相手を狙うのは苦手だ
そう思いながらも次に次にと投げる
きっと伊作だったらが怪我したらどうするんだ!と叫ぶだろう
「―――あたらねえ」
「…、うっわ!?」
を連れた忍者の空気が一瞬で変わり
進んでいく方角も急に変わる
すぐに気付けばよかった
が思い切り投げ飛ばされるのを目で追って
そこには三郎が居て
大地場も居て
三郎が手甲を振りかざす瞬間だったから
「ーーーーー!!!」
声にならない叫びというのは
こういうことなんだ
大きな音が響き渡り
服を切り裂く音が周りを包む
「……っは、」
「――ッ」
「っはっははははは!!!バカな狗め!!最期の最期に役に立ったわ!」
高らかな笑いが私たちの耳に劈く
誰もが手を止めて大地場を見れば崩れ落ちる肢体
震えているのがここからでも解る鉢屋の姿
すぐに留三郎が鉢屋の横に立ったのを見て唖然と崩れ落ちた肢体を見る
「」
横をすり抜けるのは小平太だ
その様子を目で追って、小平太がを持ち上げる
「――、!…!伊作!伊作!!の血が、の血が止まらない!!」
迷子の子供が母親を呼ぶようにの名前を呼び続ける
「もうそいつは死んだ!私の盾となってな…守ったものに殺されるんだ…!!」
「――、」
「くっくく、笑止!!私に逆らう者は皆いなくなれば良いんだよ!」
早く他を殺せ!と大地場が叫ぶ
動き出した忍者隊を蹴散らし小平太の方へ向かい止血をする小平太をかばう
「小平太…!」
「伊作、がぁ…が…!」
「落ち着いて、大丈夫…すぐに助けがくるから」
「待っていられるか…!」
叫ぶ小平太に動揺するのは私達だけではない
かくんっと力が抜けた鉢屋を支える留三郎と不破
「私が、を」
「鉢屋…!!しっかりしろ!!」
「そうだよ、三郎…!!」
「雷蔵…!ここは離れた方がいい…!!皆が動揺し始めている」
「勘右衛門…」
「ッさんは大丈夫なのか…」
「八も落ち着いて…」
乱れる心に全員が焦りを見せる
かくゆう自分もかなり動揺が隠せていない
ああ、アイツを殺せばいいんだ
ギュッと握った忍び刀の矛先はいつの間にかアイツに向いていて
いつの間にか走り出した
のに
「…殺す」
「――きみ、落ち着いた方がいいよ」
走りだした瞬間、複数のとてつもない殺気を感じ振り返る
トスッと鈍い音が響きぐらりと自分の体が揺れ
聞こえた声に視界は、曇って行った
もどる つぎに
一覧に戻る