「乱暴やなぁ」
「乱暴にもなる!!心配ばっかかけて!!」
「堪忍堪忍、で?伊作はいつ離れるんや?」
「離しません」
「おー、ものっそい、執着やなあ…末恐ろしい」
さんの懐から離れない善法寺伊作先輩
あー、と三反田先輩と顔を見合わせてため息を吐く
「さん!」
次になだれ込んできたのは四年生の先輩方(さっきまで二年生三年生が居たんだけど)
顔を真っ青にしてくるのは滝夜叉丸先輩
綾部喜八郎先輩はひっついている善法寺先輩を退かしてさんの懐に潜った
「ふぐぅっ!」
「うわあああ!綾部先輩やさしくー!」
さんが笑みを浮かべながらもつらい声を出せばおやまあと先輩が声を鳴らした
「心配しましたよ」
「三木ヱ門、心配かけて堪忍な」
「一報を聞いたときは肝が冷えました」
「ふふ、気にかけてくれたんやな」
「私も!私も…心配…心配しました」
さんが居なくなることを考えて
先生方の一報を聞いてからはそればかり考えて
「――――、さん」
「んー?」
「生きてくれてありがとうございます」
「あー」
滝夜叉丸先輩の声にあー、と頬をかきさんが下を向く
ポツリとおおきにと言えば滝夜叉丸先輩と三木ヱ門先輩が同時に抱き着いた
「ぎゃあああああ!先輩方自重してくださーい!!!」
「くーん、大丈夫だっひゃぁあああ!?」
私達が渾身の勢いで3人を外で放り出せば外から斉藤タカ丸先輩の叫び声
あ、すみません
でも、また抱き着かれては困るのでこの辺でお願いします
「伊作ー、四年が団子状態で落ちてるけど大丈夫なのかー」
「小平太がいけどんで連れて行ったぞ」
「……、あとでくると思うが」
「!無事なのかっ!!」
潮江先輩が大きな声で入室してくるのを
「「声がでかい」」
「――…、もそ」
立花先輩と食満先輩が咎めた
中在家先輩の言葉にさんがハッとして
すぐに表情をパッと顔を明るくした
食満先輩がさんの頭を撫でればくすぐったそうに身を捩った
「よかったよかった」
「うん、おおきに」
「…」
「ん?」
「その傷…、オーマガトキの時に私をかばった際にできたと聞いた」
「なんや、その噂」
「本当のことなんだろう?」
「――たとえそうだとしても、後悔してないからええねん」
「…」
「仙蔵は、仙蔵のしたいことをしただけ、俺も俺のしたいことをしただけ」
「――」
「な?」
頭をポンポンッと撫でられた立花先輩がさんを抱きしめる
さんの肩にしがみつき肩を震わす立花先輩に
食満先輩と善法寺先輩が目を合わせた
「―――、仙蔵が生きてるだけで俺は救われるんや」
それは、仙蔵だけに該当するわけやなくて、みんなみんな生きてればそれでいい
エゴだとしても迷惑だと思われても、それだけでええんよ?
立花先輩をソッと離して顔を覗き込みながら諭すさんに
私もうるりと涙腺を滲ませた
「私だって!!が生きてれば、救われる…!!」
荒々しく入室してきた七松小平太先輩も叫ぶ
きょとんと表情変えたさんにずかずかと近寄りさんの頬を包んで上に向かせた
「ちょ、小平太…!そんな、乱暴に「!」
「お前は生きろ!!私達、忍術学園の生徒の為にも!!」
「こへ、た」
「今も、これからもだ!」
うん、と言え!と怒鳴った七松先輩
今までの先輩方は心配する人、不安だったと涙を流す人
良かったと安堵する人ばかりだった
それに全部さんは大丈夫とか、堪忍なとか答えていて
「怖かったのは、私達だけじゃない…もだ、」
「あっ」
思わず声が漏れてしまった
そうだ、さんも恐かったんだ
目を見開いたさんが立花先輩の肩にあった手を離す
立花先輩も驚きながらもさんを見ると、さんの表情がくしゃりとゆがんだ
「こへぇたぁ…」
「うん!私は生きてるぞ!!も!」
「うん、うん!」
さんの額と七松先輩の額が合わさる
髪の毛を交えてグリグリと体温を分け与えるように七松先輩が擦り合わせる
「…!」
生きててくれてありがとう
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