「いたぞ!」
「雷蔵!三郎!回り込みだ!!」
「「わかった」」
「五年生たちやないか、八左ヱ門がんばりぃ」
とりあえず指示頭を応援すればあからさま怒りを示した鉢屋君
「(ちょろいもんやなあ)」
「兵助!勘右衛門!!」
木の上からの突然の気配
上を見ると万力鎖が飛びかかり地面に突き刺さる
避けた俺におしいな、と勘右衛門君が呟き
次に兵助君の寸鉄が襲ってくる
宙返りをしてそれを避ければびっくりしたような顔
そのあとすぐにニヤリとして振り返れば
「さん、注意散漫ですよ」
「おやまぁ」
大きく腕を広げた八左ヱ門
勝った!!と五人がそんな顔をしたのを見てニヤリ
「甘ちゃんかいな」
「なっ!」
「え、なんで?!」
「ッ!」
「嘘だろ!?」
ズベシャア!と豪快に砂に落ちていく八左ヱ門
八左ヱ門の背中を足蹴した俺を唖然と見つめる4人
「いつ移動したんだアイツ…」
「す、すごい…」
「…かないませんね」
「一筋縄じゃいかないっていうことか」
三郎、雷蔵…兵助に勘右衛門が俺を見る中
じゃ、またなっと右手を挙げそのまま屋根に消えた
瞬時に4人の気配は消えまた俺を追いかけるのだろうと推測できる行動に
クスリと笑いをこらえた
「こっちだー!!」
「ちげえよ!」
「こっちに気配がするよ」
「そっちだけど体はそっちじゃねえよ!」
あれは三年生の迷子くんたちと保護者やな
暫く様子を見ていると気配を駄々漏らしているのに彼らはこちらに来ない
というか富松くんむっちゃ引きずられとうない?
クスクスと屋根で笑っていると横に戦輪が刺さる
「見つけましたよ!!さん!」
「おお!滝夜叉丸君!」
「何故喜んでいるんですか」
「あまりに誰も見つけてくれなかったから」
「なんという余裕…ですがこの学年一の私が相手に!」
「やーっと見つけた!ー!」
「屋根の上じゃ穴に落としにくいですね」
「さん、ここじゃあ火縄銃でしか相手できませんよ」
「「…」」
「なんで貴様らもここにいるぅううううう!」
「滝夜叉丸は声が大きいからね」
「すぐに追いつけるよー」
「まあさんも気配駄々漏れにしてましたしね、サービスですか?」
アイドル学年が勝手に口々と喋る
喜八郎だけは落とし穴の心配だ
「で?キミたちは俺を捕まえるん?そこで喧嘩しとるんか?」
「捕まえますとも!」
「捕まえて落としてあげます」
「捕まえてーくんの髪結いはずっと僕にやらせてもらうんだぁ」
「もちろん捕まえますよ」
声をはもらせてそういうものだからおかしくてかわいくみえる
「さあ、みんなでおいで」
「なめちゃダメですよ、いきますよ!!」
三木ヱ門を合図にアイドル学年が飛び上がる
良い眺めやなあと思いつつ降り注ぐ戦輪やクナイ
縄などを避ける
地面に降り立ち4人も追いかけるように降り立つ
「あ」
「「「!!!」」」
3人が視界から消えゆっくりと俺はそれを振り返る
俺に集中しすぎて見えてへんかったんか
喜八郎は流石というか避けていたけれど
「綾部ぇええええ!!」
「まさか落ちるとは思ってなかったなあ」
「くそー!綾部覚えてろよー!!!」
「ということで僕一人で戦うことになっちゃいました」
「そうみたいやなあ」
落ちる瞬間むっちゃおもろかった
言ったらきっとタカ丸は笑って2人は赤面して起こるだろうなあ
「で、どうするんや喜八郎」
「捕まえて動けないようにすれば勝ちなんですよね」
「まあせやな」
「じゃあ」
近づいてきた喜八郎が勢いよく抱き着いてくる
思っても居なかった行動に横にずれればそこには落とし穴の印
懐からクナイを取り出して地面に刺し崩れる前に反動で地面に降り立つ
ドシャアアア
地味に音を立てて崩れて行った穴に唖然
「やるやないか、喜八郎」
「また落ちなかった…さんはいったい何者ですか」
「人間だバカ」
悩む喜八郎を放置してそのまま学園校内に潜入した
気配を殺してしばらく歩いているとスルスルと何かが這う音
おかしな音に誘われて部屋を覗けば
「毒蛇…」
ピクリと反応した蛇が警戒するように俺を見る
「なんや迷子の蛇か?人間みてすぐ飛びつかんと自己防衛でけへんで?」
手を伸ばして蛇を呼ぶ
そろそろと俺の腕に巻きつきスリスリと俺の頬を摩った
「お?おお?」
「〜〜コー」
聞こえてきた気配と声の方向へ行けば
これまた色白のかわいらしい少年が困ったようにへちょりと眉を下げている
「えっと、伊賀崎くん!!!」
「え?あ、じゅんこぉおおおお!!!」
今度は涙目で飛びついてきた彼にやべぇっ!と体を引っ込ませれば
彼はビクリと立ち止まる
「ジュンコを返してください!」
「じゅんこ…ってこの蛇のことかいな」
腕を伸ばして床に降ろせばジュンコと呼ばれた蛇は伊賀崎くんに巻きついていく
すりすりと伊賀崎くんはジュンコちゃんにすり寄る
「(なんや不思議な光景やな)」
闘争心皆無な子にあってしまえばこっちもどうしようもない
髪の毛を摩りまあええかと回れ右すればあのっ!と綺麗な声が響いた
「ジュンコ…見つけてくれてありがとうございます」
「…」
え、なにこの子
むっちゃかわええんやけど
ギューしてええ?え?捕まってまうかな?
もうどうでもいいわそんなもん
「あ、あの?」
「伊賀崎くん、むっちゃかわええ。お兄さん伊賀崎くんが誘拐されないか心配や」
「さん…でしたよね。今って確か鬼ごっこ途中ですよね?」
「せやけど、伊賀崎くんにはかなわへん」
萌えっと呟けば彼は苦笑して俺の拘束を抜ける
「見逃してあげます、ジュンコ見つけてくれたお礼に」
「心もかわええとかお兄さんどないしたらええんや」
「そのかわり…!!」
「んう?」
「名前で呼んでください!!」
「え、あ?」
なぜか照れてしまった伊賀崎くんは方向転換をして走って行く
「孫兵!」
「ッ!」
ピタリと立ち止まった孫兵は振り返って
「…また!」
そういって角に消えて行ってしまった
取り残された俺はただただ唖然と当初のここに居る目的を思い出していた
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