09,走りくる足音を




「いつまでやるんやこの鬼ごっこ」




そういえば、と思いだし一番近くに居る気配




「土井センセー」
「うわっ!くん、ビックリした…」
「あ、堪忍な…この辺六年生の塊の気配すごなっとるから」
「流石くんだね…ついさっき突っ走って行ったよ」
「あー、滝夜叉丸やなきっと。ところで先生…この競技っていつまでやるんや?」


「…さあ?」
「さあってなんなん」
「多分、学園長があきるまでだと…」
「なんやそれえ…流石に六年生に見つかってもうたら話しにならへんよ」
「大丈夫だろう、くんだもの」
「えらい自信やなあ…それよか、は組の子たちは?」


「まだ会ってないのか…」
「あはは、さすがに一年生には無理な話やったか」
「はあ」
「落ち込まんといてや、良い子たちばっかなんやから」
君は優しいね」

「あはは、あ…六年生の気配…」
「おや、逃げるかい?」
「いや、面白そうやから戦う」




土井先生を見れば面白そうにニヤリと笑う
この先生腹黒いやっちゃなあと意味を込めて笑顔で気配の方向に向かった





「見つけましたよ!!」




ドーンッと揃う立花くんを筆頭に並ぶみなさん
伊作くんが居ないのはもうあえてきかへんことにするわ




「いけいけどんどーん!!さん!私に捕まって!!」
「なにいっておるんだバカタレ!!さんは俺が捕まえる!」

「なーに、俺が捕まえて、おやつ代を上げてもらうんだ」
「…増本」
「…まあ諸々と委員会のことがある、大人しく我が作法委員会に!!」





両手に焙烙火矢
すさまじい戦闘になりそうやな




「みんな、後輩思いなんなあ…」





自分のことに願を使うのではなく委員会の為に
こんな不審者を捕まえようとするみんなに思わず笑みが零れる

ムッとした立花くんが手にしているものを投げてきた
木の枝を折りそれをホームランよろしくで打ち返し裏裏山に飛ばす




「ッチ」
「次は私だどんどーん!」
「おー、体力バカは嫌いやないでー」




突っ込んできた七松を横に避け首に手刀をくらわす
グラリと体が傾き支えればすでに意識を失っている




「小平太!次は私だ…!!」




立花の、文次!!との声に七松くんを横に避けて縄をピンッと
張って突っ込んでくる潮江くん
そのまま直線に投げられた縄は俺の体に巻きつくように円を描く


やった、と安堵の表情を見せた潮江君に




「うん、上手い縄の投げ方やな、しびれ薬とか一緒に撒けばもっと良かったと思うで」
「へ」




潮江くんのきょとん顔を見て次には彼の頭に手を置く
彼の背後に回った俺は彼の口を布で押さえた



ガクンッと足が折れた彼を支え七松くんの隣へ座らせる





「貴様…!!」
「微量のしびれ薬…大丈夫や副作用もなーんもあらへん」
「クソッ!」




次に、もそっという小さな声にクナイでそれをはじく





「上手だね、ちゃんとすぐにしびれ薬を撒くとは」
「…、本」
「どんだけなん、キミら」





思わず苦笑してしまうと
中在家くんはもう一度と投げてくる
木の中に逃げ込めば木にそれが巻きつく





「…」




取り出した帯刀で太い枝を切り落とせば
それを引いた中在家君が




「「長次ーーー!!!」」





木を抜ければ目を回した中在家君が視界に広がった






「あと、2人」
「「!」」




地上に降り立つとハッと2人がクナイを構える





「流石プロ忍者だ」
「あなどれんな」



「冷静やね、関心関心」
「バカにしているのですか」
「今は少しだけ…自分を擁護するわけじゃないけど」



「「…」」
「相手の善悪をこれだけの日数見て見抜けないのは…大丈夫なんかな」
「え?」
「立花君、というかみんなそう…」


「警戒心が強いのは良いけど、俺も人間やから怪訝にされると辛いんよね」




あははーと笑い飛ばして逃げよう
この2人をいっぺんに相手はきっと無理や
下を向いていた俺が彼らを見ればハッとしたような顔が二つ


一瞬漂った、殺気に2人を守るように前に立つ
その気配は遠くへ移動したのがわかって





「…間者か」
「ッち、気配が多すぎてわかへんかった!!」




俺が走り出したと同時に後ろに居た二人も走りだした



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